糖尿病にはなっていないけれど、血糖値が正常値より高い。そのような状態を「境界型糖尿病(きょうかいがたとうにょうびょう)」といいます。境界型糖尿病は自覚症状が無いため、健康診断などで血糖値の高さを指摘されてもそのまま放置してしまいがちです。しかし、この段階でしっかりと生活習慣の改善を行えば、糖尿病への移行を防ぐことができます。ここでは境界型糖尿病の特徴や、糖尿病に移行させないためにはどうしたらよいかについて解説していきます。
境界型糖尿病とは
まず初めに、「境界型糖尿病」の特徴について解説します。
境界型糖尿病ってどんな状態?
糖尿病には1型と2型があり、一般にいわれる「糖尿病」は2型糖尿病のことを指します。境界型糖尿病は、2型糖尿病になる前段階の状態のことをいい、糖尿病予備軍とも呼ばれます。糖尿病と診断されるほど血糖が高くはないものの、正常値よりは高い状態です。2型糖尿病は急激に発症するのではなく、何年もかけて少しずつ高血糖となり、境界型糖尿病の状態を経て、やがて糖尿病になります。境界型糖尿病と指摘されたら、糖尿病に移行しないよう、生活習慣の改善を意識していく必要があります。
境界型糖尿病の原因は?
境界型糖尿病は2型糖尿病の前段階の状態なので、2型糖尿病と同じく、生活習慣の乱れや年齢などが原因となります。人の体は血糖値を一定に保つために、血糖を下げるインスリンというホルモンがすい臓で作られ、分泌されています。年齢とともにインスリンを作り出す力が落ちたり、食事や運動などの生活習慣の乱れによって、インスリンが作られてもその効果が発揮できなくなったりすることで、血糖が上がってきます。
境界型糖尿病の症状は?
境界型糖尿病の段階では自覚症状はありません。しかし、症状が無くても、インスリンが出にくくなったり効きにくくなったりするような変化がすでに体の中では起きています。
放っておくとどうなるの?
血糖値が高い状態が続くと、全身の血管がダメージを受けます。血管が硬く、狭く、もろくなる動脈硬化(どうみゃくこうか)は、境界型糖尿病の段階から進むといわれており、心臓や脳などの血管の病気を引き起こしやすくなります。
境界型糖尿病は治る?
ひとたび糖尿病になってしまうと、残念ながら治ることはありません。インスリンを分泌するすい臓の細胞が、回復できないほど壊れてしまうからです。しかし、境界型糖尿病の段階であれば、すい臓の細胞は疲れてしまっているだけの場合が多く、食生活や運動などの生活習慣を改善することで回復する可能性があります。医療機関を受診して生活改善の方法について指導を受けるようにしましょう。
境界型糖尿病の検査と診断
どのような場合に境界型糖尿病と診断されるのでしょうか。境界型糖尿病は、2型糖尿病と同じように、血糖測定キットや採血によって検査を行います。診断は、これらの結果を組み合わせて行います。
境界型糖尿病の検査
- 空腹時血糖:朝食を抜いた空腹時に測定した血糖値
- 経口ブドウ糖負荷試験:空腹時に75gのブドウ糖を飲み、30分後、1時間後、2時間後に 血糖値を測定する検査
- HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー):過去1~2ヶ月の血糖の平均が分かる数値
境界型糖尿病の診断
①次のいずれかに当てはまる
- 空腹時血糖が110~125mg/dl
- 経口ブドウ糖負荷試験 2時間血糖値 140~199mg/dl
②HbA1cが6.5%未満
境界型糖尿病から糖尿病にしないために
境界型糖尿病になると、5年~10年で糖尿病になることが多いといわれています。糖尿病に移行させないよう、できるだけ早く対処することが大切です。
生活習慣の改善が何より大切
境界型糖尿病の主な原因は生活習慣の乱れです。まずは食習慣、運動習慣を見直しましょう。
①食習慣の改善
特別な食事制限は必要ありませんが、次のようなことに注意するようにしましょう。
- 野菜を積極的にとり、食事のときは野菜から食べるようにする。
- 腹八分目を心がける。
- バランスの良い食事を心がける。
- 間食を控える
- 過度な飲酒を控える
②運動習慣の改善
運動量が不足すると、糖が消費されずに高血糖になったり、筋肉量の減少によってインスリンの効きが悪くなったりします。激しい運動をする必要はありませんが、エレベーターではなく階段を使う、歩ける距離ならば車は使わないなど、日常生活の中でなるべく活動量を増やす工夫をしていきましょう。1日30分ほどのウォーキングを習慣にできるとよいでしょう。
③肥満の改善
肥満の方の場合、減量することでインスリンの効きが改善し、血糖コントロールが良くなります。
④禁煙
煙草を吸うことで血糖が上がったり、インスリンの効きが悪くなったりすることが知られています。糖尿病の予防のためにも禁煙は大切です。
薬は使うの?
糖尿病の飲み薬には多くの種類がありますが、α-グルコシダーゼ阻害薬(アルファグルコシダーゼそがいやく)は境界型糖尿病の患者さんにも使える薬です。この薬は食後の血糖値の上昇をゆるやかにしてくれるので、血糖が急激に上がることによる体の負担を減らし、糖尿病へ移行しにくくする効果があります。生活習慣の改善だけでは血糖コントロールがなかなかできない場合には、主治医と相談のうえ服用するようにしましょう。
クリニックプラスでの境界型糖尿病の診療の流れ
①問診
初回の方はまず問診で、生活習慣についてお聞きします。日頃の食事の内容、運動習慣、喫煙の有無や飲酒量などを中心に問診をとります。LINEの事前問診にお答えいただくと、診療がよりスムーズになります。すでに健診の結果をお持ちの方は、そちらも参考に致しますので、ご持参ください。
②検査
血液検査を行います。空腹時の血液検査が必要なので、食事は召し上がらないでいらしてください。
③生活指導
糖尿病への進行を防ぐためにも生活習慣の是正がとても重要です。普段とっている食事の内容や運動習慣、嗜好品など、改善できる部分に関して指導を行っていきます。
健康診断で異常を指摘されたものの、仕事や家事育児、プライベートが忙しくて、なかなかクリニックを受診できない方も多いと思います。クリニックプラスでは、日々お忙しい方でも受診しやすいように、事前LINE問診や、事前クレカ決済システムなど、テクノロジーを活用することで待ち時間を少しでも短くする取り組みを行っています。また、平日は夜の8時まで、さらには土日祝日も毎日営業することで、通院しやすい体制を整えています。境界型糖尿病・糖尿病予備軍と言われた方は、是非一度ご相談にいらしてください。