「更年期に差し掛かってから血圧が上がってきた」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。更年期になると男女問わず、性ホルモンの減少が原因で血圧が上がりやすくなります。
更年期の高血圧は、さまざまな生活習慣病を引き起こす可能性があるため、適切な治療を進める必要があります。本記事では、更年期の概要から血圧が上がる原因、男女別の高血圧の割合、更年期の高血圧を下げるための5つのポイントなどを解説します。
更年期とは
更年期とは、45〜55歳の時期のことです。更年期になると、男女ともに性ホルモンの低下により、さまざまな症状や障害が引き起こされます。女性と男性の更年期の違いを解説すると以下の通りです。
性別 | 女性 | 男性 |
原因 | 女性ホルモン(エストロゲン)の減少 | 男性ホルモン(テストステロン)の減少 |
発症する年齢 | 40代前半から50代後半まで | 30代から90代まで幅広い |
更年期障害の期間 | 40代後半から閉経後5年程度で落ち着く | 40代以降いつでも起こる可能性がある |
性ホルモンの減少により、自律神経(じりつしんけい:血圧や呼吸などを無意識に調整する神経系)が乱れ、抑うつや不安、不眠、イライラなど多様な症状が現れます。
更年期に血圧が上がる原因
ここからは、更年期になると血圧が上がる原因を解説します。
女性ホルモンの減少により動脈硬化リスクが高まる
女性が更年期になると血圧が上がる原因は以下の通りです。
- 更年期になるとコレステロールの増加の抑制や血管を広げる働きがあるエストロゲンが減少する
- 血液中にコレステロールが増加して動脈硬化(どうみゃくこうか:血管の弾力性が低下している状態)や脂質異常症(ししついじょうしょう:血液中の脂質などが多い状態)が進行する
- 動脈硬化や脂質異常症により血液の流れが悪くなり血圧が上がる
また、更年期において男性よりも女性のほうが、抑うつ傾向が見られます。そのため、心理的ストレスにより、さらに自律神経が乱れて血圧が高くなる傾向があります。
男性ホルモンの減少により代謝が低下する
男性が更年期になると血圧が上がる原因は以下の通りです。
- テストステロンが減少することで中性脂肪やコレステロールの代謝が低下する
- 結果、内臓脂肪や皮下脂肪が増えて、動脈硬化や脂質異常症が進行する
- 動脈硬化や脂質異常症により血液の流れが悪くなり血圧が上がる
男性の更年期は、女性のように閉経の区切りがないため、わかりにくいという特徴があります。
更年期で高血圧になる割合は女性が多い
更年期に高血圧になる割合は女性が多いです。実際に厚生労働省の令和元年国民健康・栄養調査報告を見ると以下のように記載されています。
40〜49歳 | 50〜59歳 | 60〜69歳 | 70歳以上 | |
男性 | 6.5% | 11.9% | 24.4% | 30.7% |
女性 | 4.5% | 9.0% | 20.6% | 37.1% |
高血圧の診断基準
血圧には、診察室血圧と家庭血圧があります。診察室血圧とは、病院の環境のストレスによる、血圧上昇を考慮した数値です。家庭血圧と診察室血圧に差がある場合は、家庭血圧が優先されます。
高血圧の基準となる数値は以下の通りです。
診察室血圧 | 家庭血圧 | |||
収縮期血圧 | 拡張期血圧 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
高血圧 | 140以上かつ/または90以上 | 135以上かつ/または85以上 |
降圧の目標値
高血圧症治療ガイドライン2019が定めた、血圧を下げる目標は以下のとおりです。
診察室高血圧 | 家庭血圧 | |
・75歳未満の成人・脳血管障害者患者(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈の閉塞なし)・冠動脈疾患患者・慢性腎臓病患者(タンパク尿陽性)・糖尿病患者・抗血栓薬服用中 | <130/80 | <125/75 |
・75歳以上の高齢者・脳血管障害者患者(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈の閉塞あり、または未評価)・慢性腎臓病患者(タンパク尿陰性) | <140/90 | <135/85 |
更年期の高血圧を下げるための5つのポイント
更年期の高血圧を下げるための5つのポイントは以下の通りです。
- 血圧の測定と定期受診をする
- バランスの良い食事をする
- ストレスを溜めない
- 運動習慣を取り入れる
- 節酒と禁煙をする
それぞれ解説します。
1.血圧の測定と定期受診をする
更年期の血圧管理において、毎日の血圧測定と定期受診は大切です。日々の血圧値を把握していないと、適切な治療や対策を実施できないためです。定期的に医師の診察や検査を受けながら、病状に沿った治療を進めましょう。
2.バランスの良い食事をする
食生活の乱れは、更年期を若年化させるのに加えて、生活習慣病のリスクも高まります。肉類や油物などは控えて、魚や大豆製品、乳製品などから良質なタンパク質やカルシウムを摂りましょう。
3.ストレスを溜めない
更年期は自律神経が乱れるため、ストレスを感じやすい傾向があります。ストレスが溜まると血圧が上がるため、ストレスを溜め過ぎないようにする必要があります。友人との交友や趣味、運動などによりリフレッシュを心がけましょう。
4.運動習慣を取り入れる
運動習慣は更年期の症状の改善が期待できます。運動をすると性ホルモンの主成分が増加するためです。ストレス発散や生活習慣病の予防にもつながります。ウォーキングや水泳、ヨガなど無理のない強度から始めましょう。
5.節酒と禁煙をする
飲酒と喫煙は血圧上昇の原因となります。飲酒してから数時間は血圧は下がりますが、長期的に飲酒を続けると血圧の平均値が上昇します。アルコールの摂取量は、男性で1日20ml以下(日本酒で1合、ビールで中瓶1本)、女性はその半分程度を目安にしましょう。タバコは動脈硬化を進行させるため、禁煙を心がけてください。