陰部の発疹を見たら、梅毒を疑う必要があります。
相談することが恥ずかしいと感じる部位の症状かもしれませんが、早めに医療機関を受診し、診断・適切な治療を受けるようにしてください。
ここでは、梅毒とはどんな病気なのか解説していきます。
梅毒とは
梅毒はどのような病気なのか、解説していきます。
梅毒とは
梅毒は、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)という病原体が原因の感染症です。
性行為感染症(STD:Sexual Transmitted Disease)として知られており、粘膜、感染者の血液・腟分泌液・精液などに含まれた病原体に接触し、侵入することで感染します。
近年、梅毒の感染者が増えていることが問題になっています。
梅毒に感染していることで、HIV(Human Immunodeficiency Virus:ヒト免疫不全ウイルス)など他の感染症にかかりやすくもなり、妊娠中に感染すると生まれてくる赤ちゃんに症状が出ることもあります。
梅毒の流行状況
梅毒というと、昔の病気というイメージを持っている方もいるかもしれません。
日本では西洋の文明が入ってきた戦国時代に梅毒も持ち込まれ、江戸時代にも流行しましたが、戦後に梅毒の治療薬となるペニシリン(抗生剤)が普及したことで激減しました。
ところが、2000年代には500~900例程度で経過していたものが、2011年から増加に転じています。
2022年には10,000人を超える感染者数になっており、男性では20~50代、女性では20代に多いことがわかっています。
梅毒の症状
梅毒は、3週間程度を潜伏期間とし、症状が出現します。
病期としては大きく4期に分かれています。また、梅毒に感染した状態で妊娠すると胎児にも感染します。
梅毒の病期
第Ⅰ期 初期
感染して3週間ほどで、性器・口・肛門など梅毒が侵入した粘膜の部位にできもの、発疹が出現します。
3mm~3cm程度のもので、1か月ほどで自然に消えてしまいます。
第Ⅱ期 早期顕性(そうきけんせい)梅毒
3か月ほど経つと、手のひら・足の裏・体に赤い発疹が出てきます。
バラ疹という特徴的な症状で、痛みのない発疹が全身に及び、熱・倦怠感・リンパ節腫脹などの全身症状も出現します。
また、この発疹は半年程度で消えるものですが、体内に梅毒トレポネーマは潜んでいる状態です。
第Ⅲ、Ⅳ期 晩期顕性(ばんきけんせい)梅毒
感染して3年目以降に出て症状を、晩期顕性梅毒といいます。
感染が3年以降に及ぶ第Ⅲ期では、炎症が全身に及び、ゴム腫という腫瘍が骨や筋肉・内臓にまで広がっている状態です。
さらに10年以降という長期間にわたって感染が及ぶ第Ⅳ期は、命に関わる状態です。
長期間の感染により心臓や脳に影響が出ることで、大動脈瘤や大動脈炎、進行性麻痺など梅毒感染としては一番重症な状態です。
潜伏梅毒
検査で陽性にも関わらず、症状がない状態のことを指します。
Ⅰ期で症状が消失し、Ⅱ期の症状が出現するまでの間や、Ⅱ期症状が消失した後のことです。
感染後1年以内の潜伏梅毒では、他の人に移してしまう可能性がありますが、感染1年以降の潜伏梅毒のときには、ほぼ感染しないといわれています。
神経梅毒
梅毒の感染が神経に及ぶ状態を神経梅毒といい、どの病期でも起こる可能性があります。
感染して早期は無症状のこともありますが、髄膜炎や脳梗塞の可能性、長期間に及ぶと神経麻痺となります。
妊娠中の梅毒
妊娠中に梅毒に感染することで、流産・早産・死産のリスクが高くなります。
先天梅毒
梅毒に感染した状態で妊娠を継続すると、胎盤を介して胎児に感染が及びます。
分娩に至った場合にも、生後数か月以内には皮膚に発疹が出現したり、生後2年以降に難聴や角膜炎などをきたしたりする可能性があります。
梅毒の診断・治療法
梅毒の診断と治療法について解説していきます。
診断方法
梅毒の診断は採血検査で行い、治療中も採血検査で経過をみます。
治癒が確認されるまで、繰り返し検査を受け続けることが大切です。
また、Ⅰ期の梅毒は感染力が30%と、比較的感染力の高い感染症です。
パートナーが梅毒に罹患している状態で検査を行って陰性だったとしても、感染の機会からあまり時間が経っていないときには、正しい結果が出ない可能性があるため、3週間以上空けてから検査をすることをおすすめします。
治療法
基本的には、ペニシリン系の抗生剤の内服や筋肉注射により治療を行います。
病期が進んでいるほど治療に要する時間は長く、第Ⅰ期であれば2~4週間、第Ⅱ期であれば4~8週間が目安です。
梅毒の感染予防
そもそも梅毒に感染しないための予防は、どうしたらよいのでしょうか。
性交渉を避ける
梅毒に感染している状態で性交渉を持つと、パートナーに移してしまう可能性があります。
梅毒に罹患(りかん)した人との性交渉は避けるようにするのが、そもそもの感染予防です。
また、不特定多数の人と性的接触を持つことは、感染リスクを高めてしまいます。
コンドームを使用する
性行為感染症の予防には、コンドームを使用します。
しかし、コンドームを付けていても、覆わない部分から感染する可能性もあるため、完全に感染を避けることはできません。
また、オーラルセックスやアナルセックスでも感染するので注意してください。
妊婦健診
妊娠中の梅毒は、早産や流産のリスク、先天梅毒の原因となります。
妊娠中に少しでも疑わしい症状がある場合、心当たりがある場合には、積極的に梅毒検査を行い、少しでも早く治療することが大切です。
パートナーも一緒に治療する
梅毒は何度も感染する可能性があります。
梅毒と診断された場合には、パートナーも一緒に治療するようにしてください。
お互いに治療しておくことで、再感染の予防にもつながります。
梅毒になったか不安
この記事を読んでいる方には、梅毒になったのではないかと不安に感じている方もいるのではないでしょうか。
梅毒は症状が消えても治っていない
梅毒の病期によっては、症状がなくなって見えることがあります。
梅毒は自然に治ることはなく、抗生剤による治療が必要です。
進行すると重篤な症状が出るため、早期発見、早期治療が大切といえます。
何度でも感染する
一度梅毒に感染すると一定の抗体はできますが、再感染を予防できるわけではありません。
適切な予防策をとり、再感染の予防に努めることが必要です。
保健所に相談が可能
梅毒の検査は各医療機関で行うこともできますが、保健所に相談することも可能です。
症状が出ている場合には、治療を要するため医療機関を受診してください。
一方で、パートナーが罹患していて自身の感染の有無を検査したい場合、地域によっては保健所で検査を受けられることもあります。
陰部の発疹は早めに病院へ
感染初期には感染した部位の発疹として現れますが、痛みなどはなく、一旦は発疹も治まってしまいます。
しかし、梅毒トレポネーマは、一度感染すると適切な治療を行わなければ体に潜んだ状態で、時間とともに症状は全身をむしばんでしまう感染症です。感染が長期間になれば命に関わることもあります。
近年、感染者数は増えてきており疑わしい発疹を見たら早めに医療機関を受診してください。
クリニックプラスでの梅毒の診療の流れ
①問診
梅毒は皮膚科専門外来で診療を行っています。梅毒の診断には病歴が重要です。
セックスのパートナーに同じ症状が出ていないか、梅毒感染経路の心当たりがないか、などを聞いていきます。
LINEの事前問診にお答えいただくと、診療がスムーズに行われます。
②診察
患部の診察を行います。皮膚疾患の診断は視診が非常に重要です。医師が丁寧に診察を行っていきます。
③検査
患部を診察し、梅毒を疑う場合は血液検査で確認を行います。
④治療
血液検査で陽性だった場合は、抗生物質の内服治療を行います。
症状が消えても自己判断で通院を止めず、血液検査で治癒したことを必ず確認しましょう。
梅毒は最近、患者数が増加しています。
陰部の皮膚症状があったときは放っておかずに、皮膚科の診療を受けましょう。
梅毒は皮膚科専門外来で診療を行っております。
クリニックプラスは、日々忙しい方でも通院しやすいように、事前LINE問診や事前クレカ決済システムなど、テクノロジーを活用することで待ち時間を少しでも短くする取り組みを行っています。
是非一度ご相談にいらしてください。