当院は感染症専門の医療機関ではないため、麻疹の症状が強く疑われる場合は、各種検査が可能な病院を受診することをおすすめします。
麻疹は、麻疹ウイルスによる感染症で、肺炎や脳炎などの重い合併症が起きることがあります。
以前は子どもの時期にかかることの多い疾患でしたが、今はワクチンで予防できるようになりました。
ここでは、麻疹の原因、症状や合併症、検査方法、治療方法、予防方法について解説します。
麻疹とは？
麻疹とは、麻疹ウイルスによって引き起こされる、急性の全身感染症です。
予防接種の普及に伴い、麻疹の患者は減り、麻疹ウイルスにさらされる機会は少なくなりました。
自然感染することも少なくなりましたが、それと同時に、予防接種で得た免疫が時間が経つと弱まる（強化されない）原因にもなっています。
昨今、若い世代での感染が多く見られる理由の1つは、このことだと考えられています。
麻疹は一度かかるとかからない？
麻疹は不顕性感染（ふけんせいかんせん、感染はしても発症しない＝症状が出ないこと）は少なく、免疫のない人が感染すると90%以上が発症し、一度かかると免疫は一生持続し、再びかかることはないといわれています。
麻疹の原因
麻疹の感染経路は？
麻疹の感染経路は、空気感染・飛沫感染・接触感染です。
空気感染する感染症の感染力は、非常に強いと言われています。
麻疹患者が咳やくしゃみをして、口や鼻から小さな水滴が飛び出ることを想像してください。
ウイルスを含んだ水滴は、通常は下へ落ちますが、時間が経つと水分が蒸発してウイルスが空気中を漂うようになり、それを吸い込んだ人が感染します。
そのため、患者と同じ部屋にいるだけで感染することもあります。
また、麻疹ウイルスは非常に小さいため、通常のマスクで感染を防ぐことはできません。
麻疹が流行しやすい季節は？
麻疹は通常、春から初夏にかけて流行します。
麻疹にかかりやすい人は？
麻疹にかかったことがない、そして麻疹ワクチンを1回も接種したことがない人は、麻疹の免疫がないので、最もかかりやすい人といえます。
麻疹の症状と合併症
ここでは、麻疹の症状と合併症について解説します。
麻疹の症状
麻疹にかかると、約10〜12日間の潜伏期間の後、以下のような症状が現れます。
【カタル期】
- 38℃以上の発熱
- 咳や鼻水などの気道症状
- 目の充血や涙、目やになどが出る結膜炎
- 乳幼児では腹部症状（腹痛・下痢など）
- 全身の皮疹出現1-2日前に、口腔内の頬粘膜（頬の裏）にできる「コプリック斑」という白い斑点
【発疹期】
- 再び38℃以上の発熱（二峰性の発熱）
- 全身の発疹（3-4日）
【回復期】
- カタル症状の改善
- 発疹の色素沈着化
38℃前後の発熱とカタル症状は2～4日間続き、熱は一旦下がりそうになりますが、ぶり返し、その頃に赤い発疹が出始めます。
発疹は最初に顔や首などから出ますが、次第に全身に広がり、その後、褐色の色素沈着になり消退します。
発疹が出てから消えるまでの期間は、3～5日間です。
なお、感染力が最も強いのは、発疹出現前の【カタル期】です。
麻疹の合併症
麻疹の30％でさまざまな合併症がみられ、その半分が肺炎、頻度は少ないものの、脳炎を起こしてしまう場合もあります。
麻疹の二大死因は肺炎と脳炎で、乳児の死亡例の60％は肺炎に起因するものです。
麻疹で起こしやすい合併症は、以下のとおりです。
- 肺炎
- 中耳炎
- クループ症候群
- 心筋炎
- 脳炎
- 亜急性硬化性全脳炎（あきゅうせい こうかせい ぜんのうえん）／SSPE：Subacute Sclerosing Panencephalitis
中耳炎は、約5～15%の麻疹患者でみられます。
クループ症候群は、のどの奥が感染で腫れ、声がかすれる、息を吸うとヒューヒューと音がする、などの症状が現れる疾患です。
脳炎の発症と麻疹の重症度との間に関係は認められません。
亜急性硬化性全脳炎は、麻疹にかかった後、7～10年で発症する可能性のある中枢神経疾患です。
原因は、麻疹ウイルスが体内から排除されずに、中枢神経細胞で感染状態が続いているためだといわれています。
麻疹の検査方法
確定診断のためには、血液や咽頭ぬぐい液、尿などを採取して検査する必要があります。
麻疹に対する免疫は持っていても、不十分な人が麻疹ウイルスに感染した場合、軽症で非典型的な麻疹を発症することがあります。
このような場合を「修飾麻疹（しゅうしょくましん）」と呼んでいます。
通常の麻疹と同じ症状を生じますが、症状の一部を欠いていたり、一つ一つが軽症であったりします。
修飾麻疹は症状のみで麻疹と診断することは困難なので、抗体検査が必要です。
麻疹の治療方法
ここでは、麻疹の治療法について解説します。
麻疹の治療法は？
麻疹に特別な治療法はありません。
症状を軽くする対症療法が行われ、合併症があれば、その疾患に対処します。
麻疹にかかったら仕事や学校は？
麻疹は、学校保健法の第二種の感染症なので、解熱した後3日間は出席停止です。
ただし、病状によって医師が感染の恐れがないと認めた場合は、この限りではありません。
麻疹の予防方法
ここでは、麻疹の予防方法について解説します。
麻疹は、接触・飛沫・空気のいずれの感染経路でも感染します。
麻疹ウイルスの直径は100～250nmであり、飛沫核の状態で空中を浮遊し、それを吸い込むことで感染するため、マスクでの予防は難しくなります。
唯一の予防方法は、ワクチン接種によって麻疹に対する免疫をあらかじめ獲得しておくことです。
子ども…定期予防接種
麻疹の予防には、2回のワクチン接種が一番重要です。
現在日本では、1歳になってすぐと、小学校入学前の2回、定期接種を行います。
生ワクチンなので、免疫不全などの病気や、飲んでいる薬によっては、接種できない場合があります。
大人…ワクチン接種歴確認と抗体検査
今までに麻疹にかかったことのない場合やかかったかどうかわからない場合は、母子手帳などで予防接種歴を確認するか、医療機関で抗体価検査を受けることを検討しましょう。
麻疹ワクチンは生ワクチンのため、妊婦は接種できませんので、妊娠前の確認をおすすめします。
クリニックプラスでの麻疹の診療の流れ
1. 問診・診察
当院は感染症専門の医療機関ではないため、麻疹の症状が強く疑われる場合は、各種検査が可能な病院を受診することをおすすめします。
ただし、麻疹にかかったことがない方や、過去にワクチン接種をされた方で、抗体検査をご希望される方は当院へご相談ください。
また、他症状がなく皮疹のみの場合、その原因が麻疹によるものなのかご不明な場合はご相談ください。
LINEの事前問診にお答えいただくと、診療がスムーズに行われます。
クリニックプラスは、平日は20時まで、土日祝日も毎日診療しています。
