「りんご病」という愛くるしい病名を聞いたことがある方もいるでしょう。なんとなく、頬が赤いというイメージもあるかもしれません。どのような病気、症状、治療法があるのか具体的に解説していきます。
伝染性紅斑とは
りんご病は俗称で、医学的には「伝染性紅斑」といいます。どのような病気なのか解説していきます。
伝染性紅斑とは
伝染性紅斑はヒトパルボウイルスB19というウイルスによる感染症です。りんご病とも呼ばれ、リンゴのように頬が赤くなることで知られています。
どんな人に多い
多くは小児にみられるもので、そのなかでも5~9歳が最も多く、ついで0~4歳に多いといわれています。医療機関内でも感染が見られることがあり、看護師や看護学生などの、成人の集団感染が報告されています。
伝染性紅斑の症状
頬が赤くなるのが特徴的な症状です。感染の期間などについても解説していきます。
潜伏期間
潜伏期間は10~20日とされています。感染してから2週間前後の間に頬が紅くなる症状がでてきます。
顔の赤み
始めに、両頬に境界がくっきりとした紅い発疹(蝶翼状)が生じます。まずは顔、そこから足や手など四肢にレース状や網目状と表現される発疹が広がっていきます。
成人例では全身症状がでることもあり、頭痛や関節痛、関節の痛みにより1~2日程度歩けなくなることもあります。
いずれも後遺症、合併症はなく、1週間程度で自然に治ることがほとんどです。
症状が再燃することがある
頬の赤みなどの発疹は5~7日程度で消えますが、入浴や精神的な緊張、日に当たることなどが原因で発疹症状が再度出現する場合があります。
前駆症状がみられる
頬が紅くなる7~10日前、感染して1週間前後のタイミングで風邪の症状が現れたり、微熱がでたりすることがあります。ウイルスの排泄量はその頃が一番多く、感染しやすい時期といわれています。発疹がでたときにはすでにウイルスの排泄量は少なくなっており、感染力はかなり低い状態であるといえます。
伝染性紅斑の原因は
伝染性紅斑の原因について詳しく見ていきます。
ヒトパルボウイルスB19
前述したとおり、伝染性紅斑の原因となるのはヒトパルボウイルスB19です。1983年に伝染性紅斑の原因がヒトパルボウイルスB19であることが知られ、その後の研究で確実なものとされました。さらに、症状がでない顕性感染や典型的とはいえない症状を伴う症例もあることなどが明らかになっています。
伝染性紅斑はヒトパルボウイルスB19の典型的な症状ですが、関節炎や関節リウマチ、血小板減少症といった病気の原因になることもあります。
感染経路
ヒトパルボウイルスB19は飛沫感染、もしくは接触感染するといわれています。まれに、ウイルス量が多い時期(紅斑がでる10日程度前)に献血された輸血検体内にウイルスが混じってしまうことがあり、その検体の輸血を受けて感染してしまったという例も報告されています。
伝染性紅斑の診断
伝染性紅斑の診断方法について解説していきます。
特徴的な見た目
伝染性紅斑は5類感染症に分類され、届け出が必要とされています。まずは見た目による診断が重要で、①両頬の紅斑②四肢のレース状の紅斑、この2つがそろうと伝染性紅斑と診断されます。
検査診断
ウイルス自体がいることを確認することはできません。ウイルスに対する抗体価を測定し、上昇があればヒトパルボウイルスB19感染症と診断されます。ヒトパルボウイルスB19の感染と診断されます。採血は1回ないしは2回採取します。
伝染性紅斑で気をつける人(ハイリスク患者)
伝染性紅斑は無症状ないしは軽症で経過することが多い感染症ですが、中には重症化しやすい方もいます。
血液疾患の患者
溶血性貧血の方では、汎血球減少(白血球、赤血球、血小板のすべての値が低くなる)が起きることがあります。
妊婦
妊婦でもヒトパルボウイルスB19の感染に気を付けなくてはいけません。流産のリスクになるほか、胎児水腫を起こす可能性もあります。
免疫に問題がある方
免疫抑制剤を飲んでいる方や免疫に問題がある方では感染がなかなか治癒せず、持続感染となる可能性があります。
伝染性紅斑の治療法
伝染性紅斑の治療法について解説していきます。
自然治癒
伝染性紅斑は基本的には自然に症状が改善していくもので、特別な治療法、治療薬はありません。
症状の緩和
特別な治療はないため、痛みがあれば鎮痛剤を使用する、かゆみがあれば抗ヒスタミン剤などで症状を緩和させる、といった対症療法が主となります。
免疫不全や血液疾患の方にはγ―グロブリン製剤の投与が行われることがあります。
伝染性紅斑の予防
伝染性紅斑は小児の間で定期的に流行が見られる感染症です。予防についても見ていきます。
手洗いうがい
ヒトパルボウイルスB19は接触感染、飛沫感染によって広がります。感染力が強い時期には特徴的な症状は出ないので日ごろから手洗いやうがいといった感染対策を行うことが大切です。
終生免疫
ヒトパルボウイルスB19感染症は終生免疫であり一度感染して抗体が作られると、その後生涯にわたって再度感染が起きることはありません。
感染拡大の防止は難しい
伝染性紅斑は発疹の出現前が最も感染力が強いといわれています。典型的な症状である両頬の発疹が出たときには、すでに感染の危険性は低い状態になっており、その時点から対策を始めても、すでに感染が広がっていると考えられます。
そのため、伝染性紅斑は感染拡大を防ぐことは難しく、日ごろからの手洗いうがいといった感染予防が大切といえます。
予防接種はない
伝染性紅斑、ヒトパルボウイルスB19の予防接種は現在のところありません。幸いにも症状が軽い状態で改善される方も多いのが伝染性紅斑です。
登校の目安は全身状態が良いこと
伝染性紅斑は感染症法において5類感染症に分類されており、5類感染症では学校の出席停止などの措置がとられることがあります。伝染性紅斑では頬の赤みがでるころにはほぼ感染力はない状態であり、発疹があっても元気に過ごすことができていれば特に出席停止の必要はありません。
クリニックプラスでの伝染性紅斑の診療の流れ
①問診
いつごろから、どこに、どういうタイミングで、どのような症状がでているのかを聞いていきます。LINEの事前問診にお答えいただくと、診療がスムーズに行われます。
②診察
患部の診察を行います。皮膚疾患の診断は視診が非常に重要です。医師が丁寧に診察を行っていきます。
③治療
外用薬や内服薬を用いて治療をしながら、日々の生活での注意点や、予防として行うべきことなどについて指導を行っていきます。
伝染性紅斑はありふれた疾患です。症状でお困りの方は早めに医療機関を受診するようにしましょう。クリニックプラスは、平日は夜の8時まで、土日祝日も毎日営業しております。是非一度ご相談にいらしてください。