2021年6月時点で広く知られている変異株は、英国のVOC202012(イギリス型)と呼ばれるものと、インドの変異株(インド型)、南アフリカの変異株(南アフリカ型)と、ブラジルの変異株(ブラジル型)の4つです。日本国内では既に感染力の強いイギリス型が従来型に置き換わる形で拡大し、続いてインド型、ブラジル型、南アフリカ型の感染報告も増えてきている状況にあります。
日本で既に10%以上の方が接種を終えたファイザー社のワクチンは、イギリス型に対して93.4%、インド型に対して87.9%と、高い発症予防効果を示したという報告があります(Emma C Wall,et al. Lancet. 2021. DOI:10.1016/S0140-6736(21)01290-3)。これらの値はワクチンを2回接種した時の結果で、1回接種のみではここまで高い発症予防効果は得られておらず、2回接種の重要性についても述べられています。
一方で南アフリカ型とブラジル型は、いずれもE484K変異を認めており、これらの変異がある場合、発症予防効果は20%程度減弱する可能性があるとされています(Xuping X, et al. Nature Medicine; 27, 620-621, 2021.)。5月5日にカタールから報告された論文では、南アフリカ型に対しては、ファイザー社のワクチンによる発症予防効果は75%と低下していたとあります(Laith A, et al. N Engl J Med. 2021. DOI: 10.1056/NEJMc2104974)。ただし、重症化を防ぐ効果は、変異の種類に関わらず、97.4%と非常に高い効果が報告されていますので、ワクチンの接種は行った方が良いと言えるでしょう。
監修医
長谷 啓
慶應義塾大学医学部を卒業後、市中病院での初期・後期臨床研修を経て、慶應義塾大学医学部循環器内科に入局。心臓カテーテル班に所属し、カテーテル治療に4年間従事。その後、プライマリケアを修得するために市中病院やクリニックの総合内科・皮膚科・小児科にて外来診療の研鑽を積み、2021年5月クリニックプラス下北沢の院長に就任。クリニックプラス下北沢では年間約17,000名の診察を実施。専門性の高い循環器診療に加え、子供から大人まで幅広く総合内科・皮膚科としてのプライマリケアを提供。
執筆論文
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Transcatheter aortic valve replacement with Evolut R versus Sapien 3 in Japanese patients with a small aortic annulus: The OCEAN-TAVI registry
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A Case with Intractable ST-Elevation Myocardial Infarction Complicated with Acute Stent Thrombosis