突然始まり、突然終わる動悸のなかにはWPW症候群と呼ばれるものがあります。心電図で「WPW症候群」と異常を指摘されるものの全く症状はないという方もいます。
WPW症候群とはどのような病気なのでしょうか。解説していきます。
WPW症候群とは
WPW症候群(Wolff-Parkinson-White syndrome)について解説していきます。
心臓は電気信号で動いています。心臓の中には、心房と心室の間に1本だけ、刺激伝導系と呼ばれる心臓の伝導路があります。WPW症候群は、通常の伝導路の他に、心房と心室の間にもう1本、2本目の伝導路ができてしまっている状態です。この伝導路を副伝導路、ケント束といい、ここに通常でない電気の流れが発生し、不整脈の発作がおきる原因になることがあります。
WPW症候群の原因
心臓内に副伝導路ができるWPW症候群は、生まれつき、先天的なものがほとんどです。有病率は1,000人に数人程度で、生まれつき副伝導路ができている人も、9割は消えてしまうともいわれています。
まれに、肥大型心筋症や炎症に合併することもあります。
WPW症候群の診断
WPW症候群の診断について解説していきます。
心電図の異常
WPW症候群は多くの場合、健診の心電図で異常が見つかって指摘されます。WPW症候群では動悸や不整脈の症状が全く出ていないのにも関わらず心電図では異常が見られることがほとんどで、専門外来を受診するきっかけになります。
動悸発作
WPW症候群では、副伝導路に電気が通ることで不整脈が引き起こされます。動悸症状は突然始まり突然終わるもので不整脈は特にきっかけなく訪れます。
動悸発作で病院を受診し、心電図がWPW症候群を疑うものであった場合には、動悸の原因はWPW症候群が関与している可能性が高いと考えてよいでしょう。
WPW症候群の診断
WPW症候群の診断、検査について解説していきます。
心電図
動悸症状があった場合にはすぐに医療機関を受診し、心電図をとってもらいましょう。WPW症候群であると診断でき、副伝導路の場所についてもある程度の目安がつけられるかもしれません。
また、健康診断の心電図でWPW症候群という指摘をされており、検査以外の時に動悸症状がある方はWPW症候群による発作の可能性が高いといえます。健康診断の結果、心電図の波形がある方は、循環器内科を受診するようにしてください。
ホルター心電図
WPW症候群の動悸発作が頻繁に出ているときには、ホルター心電図をとることで、1日の間にどのくらいの頻度で不整脈になっているかを見ることができます。
心臓超音波検査
不整脈、動悸発作がある場合には、心臓に病気がある可能性を考え、心臓超音波検査を行います。心臓病のスクリーニングをするためには、まずは胸の上から行う経胸壁心臓超音波検査から行うのが一般的です。
WPW症候群の治療
WPW症候群の治療法について解説していきます。
経過観察
一般的に、WPW症候群およびWPW症候群に伴う不整脈により生命が危険にさらされることはありません。
心電図で異常が見られるだけで不整脈が全くない状態で経過する方は、積極的な治療を行わず経過を見るケースが多いでしょう。また、不整脈の頻度が少なく、日常生活に支障がでないのであれば経過観察を選択することになるかもしれません。
バルサルバ手技
動悸発作が起きてしまったときに迷走神経を刺激する行為を試すことで発作が治まる可能性があります。
深呼吸をした状態で息をこらえるバルサルバ手技、それだけでなく、冷たい水を飲んだり、頚動脈をマッサージしたりすることで発作が止まることがあります。
薬で不整脈を止める
バルサルバ手技で不整脈、動悸発作が治まらないときにはATP(アデホスコーワ)という注射薬を使うことで不整脈を止めることができます。ごくわずかな時間ですが、心臓の電気の流れを止める、心臓を止めることで不整脈をリセットする方法です。
そのほかにも、シベノールやサンリズムといった抗不整脈薬を使うこともあります。
心房細動ではワソランやジギタリスといった薬が治療のために使用されることがありますが、WPW症候群で心房細動が合併したときにはワソランやジギタリスの使用は禁忌となりますので注意してください。
電気的除細動(カルディオバージョン)
いわゆる「電気ショック」です。不整脈により血圧が低下するなど全身状態が不安定な場合や、薬を使っても不整脈が止まらない時にはカルディオバージョンを行います。心臓は電気刺激で動いていますが、外部から電流を流すことで電気の流れをリセットし、不整脈をとめる治療です。
カテーテルアブレーション
根治術はカテーテルアブレーションです。カテーテルアブレーションは、動悸の原因となっている心房と心室をつなぐ副伝導路を、カテーテルを使って焼き切る手術です。カテーテルの検査、電気生理学的検査で心臓内のどこに副伝導路があるのか探し、原因となる部分にカテーテルアブレーションを行います。
通常の伝導路に近接して副伝導路がある場合など、副伝導路を焼き切ることで通常の伝導路に影響が出る可能性があるときには手術が難しいこともあります。しかし、頻度としては非常に少なく、副伝導路を焼き切ることができれば再発の可能性も低い治療です。
クリニックプラスでのWPW症候群の診療の流れ
①問診
症状についてお話をききます。健診で指摘された方は、健診の結果を持参ください。事前にLINE問診であらかじめお答えいただくと、診察がスムーズに行われます。この時点で動悸発作が起きているような状態の場合には、細かい問診を省略してすぐに検査に移行することもあります。
③身体診察
聴診器を用い、心臓の音や呼吸音に異常がないかを確認します。
④検査
心電図検査を行います。心電図検査にてWPW症候群の診断がついたものの、動悸発作をくり返している様な場合には、24時間心電図(ホルター心電図)の検査を勧めさせていただく場合もあります。
⑤専門病院への紹介
発作をくり返しているような場合には、カテーテルアブレーションの治療が必要となる場合があります。カテーテルアブレーションの治療を積極的に行っている大学病院や総合病院を紹介させていただきます。クリニックプラスは多くの大学病院や総合病院と連携をとっておりますので、速やかに紹介することが可能です。
健診でWPW症候群をしてきされた方、普段から動悸の発作を認めている方は、早めにクリニックを受診するようにしましょう。クリニックプラスでは循環器内科専門医による診療を、スピーディに受けることができます。また、事前LINE問診や、事前クレカ決済システムなど、テクノロジーを活用することで待ち時間を少しでも短くし、通院しやすい体制を整えています。ご心配な方はぜひ一度相談にいらしてください。