「頻脈性心房細動と言われて薬を処方されたけど、通院が面倒だなあ、いつまで続けるのかなあ」と憂鬱な気持ちになってしまったことはありませんか?
定期的な通院は、なかなか負担になるもの。あまり自覚症状がないと、通院をやめてしまう方もおられます。ですが、頻脈性心房細動は、しっかりと治療を続けなくては、合併症を起こす可能性の高い病気です。
ここでは、頻脈性心房細動のメカニズムを解説するとともに、合併症について解説します。頻脈性心房細動の治療を続ける大切さを感じていただければ幸いです。
頻脈性心房細動のメカニズムと症状は?
まずは、頻脈性心房細動という病気について解説します。
心房細動は、心臓の「心房」という部位で異常な電気信号がいくつも発生し、心房がブルブルと細かく痙攣したような状態になったものです。痙攣により通常よりも多い異常な電気信号が発せられ、頻脈となります。
頻脈性心房細動を生じると、心臓の動きが不規則となり、脈が早くなり、また、リズムも乱れます。そのため、以下のような症状を感じることが多いです。
- 動悸がする
- 息切れがする
- めまい、ふらつきを感じる
- だるい
頻脈性心房細動の原因
頻脈性心房細動を発症する原因としては、以下のようなものが挙げられます。
加齢
心房細動の患者数は60歳代から増えます。日本でおこなわれた調査によると、心房細動の罹患立は、60歳代で男性1.94%・女性0.42%、70歳代で男性3.44%・女性1.22%、80歳代で男性4.43%・女性2.19%でした。
女性と比較すると男性の方が心房細動を発症するリスクが高いです。加齢とともに頻度が高くなるため、高齢化のすすむ日本では今後も患者数が増加すると見込まれます。
心臓の疾患
心不全や心筋梗塞、僧帽弁狭窄症などの心臓弁膜症といった心臓の疾患があると、心房細動を起こしやすくなります。
アルコール、タバコ
週に7杯以上のアルコールを飲む方は、心房細動を起こすリスクが約2倍になるとわかっています。具体的には、毎日350ml以上のビールを飲む方は注意が必要です。アルコールを減らす・やめることで、不整脈の発生を抑えることができますので、できるだけ減らすようにしましょう。
また、タバコは心房細動を起こすリスクを約1.5倍に高めます。高血圧や心不全の発症にも関与し、総合的に心臓への負担を高めますので、タバコも減らす・禁煙するなど取り組めるとよいです。
遺伝的な要因
心房細動には、遺伝的な要因も関わっています。両親がどちらも心房細動を持たない場合に比べて、両親の片方が心房細動を持っていれば発症のリスクは1.8倍、両親ともに心房細動を持っていれば発症のリスクが3.2倍となります。
その他の要因
上記以外にも、貧血や脱水、発熱、ストレス、過労、睡眠不足、甲状腺疾患なども頻脈性心房細動を引き起こす原因になりえますので、注意が必要です。
頻脈性心房細動の検査
頻脈性心房細動の診断のために、いくつかの検査を組み合わせておこないます。
- 心電図検査
- 心房細動やほかの不整脈の有無を確認します。その場では心電図の異常が見られないことも多いため、24時間心電図(ホルター心電図)の検査を勧めさせていただく場合もあります。
- 心エコー検査
- 心房内に血栓が形成されていないかを確認するために、心エコー検査をおこなう場合もあります。
- 血液検査
- 直接的に頻脈性心房細動を診断するための検査ではありませんが、頻脈性心房細動の原因となりうる疾患が隠れていないか、また、頻脈性心房細動によって心不全の増悪がないかを調べます。
- 胸部レントゲン検査
- 頻脈性心房細動が続くことにより、心不全になると、心臓が大きくなり、場合によっては肺に水がたまってしまったりします。レントゲン検査では心拡大の有無や、肺の水の有無などを確認することができます。
頻脈性心房細動の2大合併症
頻脈性心房細動には、2つの重大な合併症があります。合併症を起こさないためには、治療をしっかり継続することが重要です。
心原性脳梗塞
心房細動を代表として、心臓の疾患が原因で生じる脳梗塞を「心原性脳梗塞」と呼びます。
心房細動は、心臓の上半分にある「心房」という部屋が細かく痙攣を起こした状態です。すると、血液の流れがよどんでしまい、血液がスムーズに流れなくなります。血液は流れていないとすぐに固まってしまうため、心房細動が起こると心臓の中で血栓(血の塊)が作られやすくなるのです。
心臓で作られた血栓が血液の流れに乗って運ばれ、脳の血管を詰まらせてしまうと、脳梗塞となります。
脳梗塞の重症度は、詰まった血管の太さと関連します。
心臓でできる血栓は比較的大きいため、脳内の大きな血管を詰まらせ、広い範囲で脳の血流が途絶え、機能が低下することになります。脳梗塞の中でも、重い後遺症が残りやすいのです。
うっ血性心不全
心臓は、規則正しく収縮して血液を全身に送り出すための「ポンプ」です。このポンプの機能が低下すると「心不全」と呼ばれる状態になります。
頻脈性心房細動の方は、ポンプとしての機能をうまく果たせない状態です。心房が痙攣によってしっかり収縮しないと、全身に送り出せる血液の量が減ってしまいます。また、脈拍数が多いため、収縮した心房が十分に拡張するだけの時間がありません。
この2つの要因で、心臓から全身へめぐる血液量が減り、血液が心臓の手前でたまり心臓に負担がかかるようになります。このような状態が続くことで、心不全に陥るのです。心房細動によって心不全が起こるだけでなく、心不全によっても心房細動が起こるという、互いに悪影響を与え合う疾患です。
心不全は「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と定義されています。(引用元:一般社団法人 日本循環器学会『心不全の定義』記者発表について)進行性で、完治することがありません。心房細動のコントロールをおこない、心不全を起こさないことが大切です。
頻脈性心房細動の治療
頻脈性心房細動では、自覚症状を抑えたり、合併症を予防したりするための治療を行います。主におこなわれる治療についてご紹介します。
薬物治療
①抗凝固療法
脳梗塞の予防のために使われるのが、血液をサラサラに保つ「抗凝固薬」です。ただし、持病の有無などから脳梗塞のリスクが高くない場合には、抗凝固薬を使わずに経過をみる場合もあります。
<心房細動の治療に使われる抗凝固薬>
- ワーファリン(ワルファリン):歴史の古い抗凝固薬です。どなたでも使いやすいですが、採血で効果の確認が必要になります。
- 非ビタミンK阻害経口抗凝固薬:DOACと総称される種類の薬です。効果の確認に採血は不要ですが、腎臓の機能が悪い方は使えない場合があります。
②心拍数調整療法
近年、心房細動の治療では「心拍数調整(レートコントロール)」が重視される傾向にあります。1分間に110回未満を目安に、心拍数を抑える内服薬を使います。
<心拍数調整に使われる薬の種類>
- βブロッカー:心拍数を下げ、心臓を休ませる作用の薬です。
- カルシウム拮抗薬:高血圧のある場合に併用されることが多い薬です。カルシウム拮抗薬の一部には、房室伝導を抑え、脈拍を下げる効果があります。
- ジギタリス製剤:脈を抑えるだけでなく、心臓の収縮力を高める作用のある薬です。長期間にわたり使用するというよりは、症状の悪化している場合の一時的な使用であることが多いです。
カテーテル治療
カテーテル治療は、心房細動を「治す」ための治療です。
カテーテル治療は内服薬での治療と比べて効果が高いですが、1度だけでは再発することも多いです。複数回おこなうことで、再発率を下げることができます。心房細動は進行するほど治療が難しくなるため、若くして心房細動を発症した方は早いうちのカテーテル治療がおすすめです。年齢・症状・進行度合い、そしてご本人の希望を総合的に判断して、カテーテル治療をおこなうかどうかご相談となります。
クリニックプラスでの頻脈性心房細動の診療の流れ
①問診
症状についてお話をききます。事前にLINE問診であらかじめお答えいただくと、診察がスムーズに行われます。この時点ですでに発作が起きているような状態の場合には、細かい問診を省略してすぐに検査に移行することもあります。
②身体診察
聴診器を用い、心臓の音や呼吸音に異常がないかを確認します。
③検査
心電図検査を行います。心電図検査にて、心房細動を認めないものの、心房細動を強く疑う症状のある方は、24時間心電図(ホルター心電図)の検査を勧めさせていただく場合もあります。心房細動の症状が出現してから長時間経過しているような場合には、心房内に血栓が形成されていないかを確認するために、心エコー検査を行う場合もあります。
④内服薬や点滴による治療
診察中に発作が起きているような場合には、点滴の抗不整脈薬にて加療を行う場合もあります。来院時発作が起きていない場合は、発作時に内服していただく薬を処方致します。
また、脳梗塞のリスクが高い方には、血液をさらさらにする薬による治療を開始します。
⑤専門病院への紹介
発症初期の心房細動の治療にはカテーテルアブレーションが有用です。カテーテルアブレーションの治療を多く行なっている大学病院や総合病院を紹介させていただきます。クリニックプラスは多くの大学病院や総合病院と連携をとっておりますので、速やかに紹介することが可能です。
突然心臓がドキドキするような場合には、頻脈性心房細動を発症しているかもしれません。クリニックプラスでは循環器内科専門医による診療を、スピーディに受けることができます。また、事前LINE問診や、事前クレカ決済システムなど、テクノロジーを活用することで待ち時間を少しでも短くし、通院しやすい体制を整えています。ご心配な方はぜひ一度相談にいらしてください。