健康診断などで「上室性期外収縮の可能性あり」「要精密検査」と指摘されたことはありませんか?
心臓の異常と聞くと、なんだか怖く感じてしまいますよね。検査の日まで、ソワソワして落ち着かないということもあるかもしれません。ここでは、比較的多い異常である「上室性期外収縮」がどのようなものか、また、必要な検査や治療についてご紹介します。
上室性期外収縮とは
まずは、上室性期外収縮という病気について、そのメカニズムや症状について解説します。
上室性期外収縮は不整脈の一種
上室性期外収縮は、不整脈の一種です。「不整脈」と聞くと重大な病気のように感じると思いますが、心臓の脈が1回でも乱れると不整脈と呼ばれるため、健康な方でも不整脈をお持ちのことは珍しくありません。
通常、心臓の鼓動は、心臓の上部にある「洞結節」という部位から送られる電気信号によって規則正しく制御されています。ところが、何らかの原因によって洞結節以外の部位で電気信号が作られることがあります。これにより通常と異なるタイミングで心臓の収縮が起きたものが、不整脈です。
上室性期外収縮は、心臓の上半分の「心房」という部分から異常な電気信号が発生して生じます。軽微なものも含めると、成人の99%、ほとんど全員に上質性期外収縮が認められるほど、ありふれた不整脈です。
緊急性はないことがほとんど
上室性期外収縮は20歳以上の方のほとんど全員にみられます。健康診断などの短い時間の検査では発見されないだけで、長い時間をかけて心電図を取れば1日に何度かは起きているものなのです。
「すぐに治療をしなければいけない」「命に関わる」というものではないことが多いので、安心してください。一般的に、上室性期外収縮以外に心臓に問題がなければ、運動などを制限する必要もありません。
上室性期外収縮の症状と治療
上室性期外収縮の自覚症状や、指摘された場合に必要な検査・治療についてご紹介します。
上室性期外収縮の症状
一般的には、ほとんど自覚症状を感じないことが多いです。場合によっては、以下のような症状を感じるかもしれません。
- 一瞬喉がつまるような感じがする
- 胸が押されたような感覚がある
- 脈が1回抜けたような感じがする
- 大きな脈が出たような感覚がする
自覚症状があったとしても、それによって日常生活に支障をきたしていないようであれば、問題とならないことが多いです。
上室性期外収縮を指摘された場合の検査
上室性期外収縮は概ね問題のない状態ですが、ほかの疾患が隠れている可能性を排除するため、精密検査をおこないます。
- 心エコー
心臓の動きや形状に問題がないかどうか、超音波をあてて確認する検査です。15~30分程度かかります。 - 24時間ホルター心電図
24時間分の心電図をとります。装着している間も、いつも通りに日常生活を送っていただき、普段の生活でどのくらい不整脈が発生しているのかを記録します。
期外収縮の原因になるような心臓の基礎疾患としては、心筋症、心不全、心臓弁膜症などが挙げられます。
上室性期外収縮の治療
心筋症、心不全、心臓弁膜症など、心臓の基礎疾患が見つかった場合には、そちらの治療をおこないます。心臓の負担を減らすための薬や、心臓の拍動のリズムをコントロールする薬などを使うことが多いです。
自覚症状がなく、心臓の基礎疾患もない上室性期外収縮の場合には、治療をせずに定期的な検査のみで問題ありません。胸の苦しい感じなど、自覚症状があって気になる場合には、症状を緩和させる薬を使う場合もあります。
また、自覚症状がある場合には、上室性期外収縮を起こしうる生活習慣を見直すことも大切です。
飲酒・喫煙・睡眠不足・精神的なストレス・疲労・カフェインの大量摂取など、心臓に負担となるような習慣に心当たりがある場合には、改善してみましょう。
治療を要する不整脈とは?
上室性期外収縮は治療を必要としない場合が多いですが、不整脈の中には速やかに治療を開始した方がよいものもあります。
心房細動
上室性期外収縮をきっかけに、心房細動を起こすことがあります。
上室性期外収縮が連発することで、心房の中で電気信号がいくつも発生し、心房がブルブルと細かく痙攣したような状態になるのが心房細動です。
心房細動が起きると、心房の中で血液の流れがよどんでしまい、うまく流れなくなります。このような状態が続くと、心臓の中で血栓(血の塊)ができてしまうことがあり、血栓が脳の血管を詰まらせて脳梗塞の発症につながる恐れがあります。。
心房細動が起きるとすぐに命に関わるというわけではありませんが、心房細動を放置することは脳梗塞のリスクにもつながるので、早めに病院を受診することが望ましいです。心房細動を発症した場合には、血栓ができないようにするために、血をさらさらにする内服薬の治療を行う場合があります。
発作性上室性頻拍
心房から起こる頻脈には、心房細動の他に発作性上室性頻拍と呼ばれる不整脈があります。この発作性上室性頻拍も、心房細動と同様に、上室性期外収縮がひきがねになって起きることがあります。とくに何の前触れもなく突然動悸や息切れ、胸の不快感を感じることが多く、症状が重い場合は血圧の低下や失神が生じることもあります。
まれですが、発作の持続が数日に渡るような場合には、心臓の機能が落ちて「心不全」の状態となる可能性もあります。治療には頻脈を停止させるような薬を使用する事が多いですが、発作を何度もくりかえすような場合は、発作性上室性頻拍が起きないようにカテーテル治療などをおこなうこともあります。
心室頻拍
心臓の下半分の「心室」という部分から電気信号が発生することで生じる不整脈を、心室性期外収縮といいます。この心室性期外収縮が、1分間に120回以上の頻度で3連続以上起こったものが心室頻拍です。
数連発くらいの心室頻拍であれば経過観察でよいこともありますが、長く続く場合や、心臓の基礎疾患がある場合には命に関わる可能性もあり、注意しなくてはなりません。
自覚症状として、動悸・胸の痛み・めまいなどを感じることがあります。
クリニックプラスでの上室性期外収縮の診療の流れ
①問診
症状の有無についてお話をききます。健康診断で指摘されて受診される方もいらっしゃると思います。そういった方は健康診断の結果も持参ください。また、事前LINE問診にあらかじめお答えいただくと、診察がスムーズに行われます。
②身体診察
聴診器を用い、心臓の音や呼吸音に異常がないかを確認します。
③検査
心電図検査を行います。心電図検査にて、上室性期外収縮が頻回に認められるような場合や、症状のある方は、24時間心電図(ホルター心電図)の検査を勧めさせていただく場合もあります。また、頻回の上室性期外収縮を認める方には、採血検査や心エコー検査などを追加して行う場合もあります。
④生活指導及び薬の処方
上室性期外収縮はほとんどが治療を要さないものの方が多く、定期的な健康診断などでフォローアップしていくことが多いですが、ごくまれに症状として強く感じる方もおりますので、そういった場合には投薬加療も検討します。
⑤専門病院への紹介
上室性期外収縮が何かしらの心臓の基礎疾患によっておきていると考えられた場合には、基礎疾患の専門的な精査のために大学病院や総合病院を紹介させていただくこともあります。クリニックプラスは多くの大学病院や総合病院と連携をとっておりますので、速やかに紹介することが可能です。
上室性期外収縮は放置していても問題にならない場合が多いですが、まれに心臓疾患が隠れている可能性があります。クリニックプラスでは循環器内科専門医による診療を、スピーディに受けることができます。また、事前LINE問診や、事前クレカ決済システムなど、テクノロジーを活用することで待ち時間を少しでも短くし、通院しやすい体制を整えています。ご心配な方はぜひ一度相談にいらしてください。