ひどい花粉症で、どんな薬を使ってもなかなか良くならず日常生活に支障が出る…
そのような方は、ゾレアという注射の治療を受けられる可能性があります。
ゾレアによる花粉症の治療とはどのようなもので、どのような人が治療を受けられるのかについて詳しく解説します。
ゾレアってどんな薬?
花粉症は、植物の花粉が原因となり、くしゃみ、鼻水、目のかゆみなどのアレルギー症状を起こす病気です。
2020年から、重症のスギ花粉症に対してゾレアという注射を使った治療が受けられるようになりました。まず初めに、ゾレアがどのような薬なのかを解説します。
重症の花粉症治療に使う注射のお薬です
飲み薬や点鼻薬など、花粉症の薬にはさまざまな種類がありますが、症状の強い方では十分な効果を感じられない場合があります。
ゾレアは、他の治療では効果がみられない重症の花粉症患者さんに使うことのできる注射のお薬です。
スギ花粉が飛ぶ時期に、月に1~2回、基本は3か月、皮下に注射をすることで効果を発揮します。
ゾレアはどうして花粉症に効くの?
体が花粉を異物と判断してしまうと、花粉を攻撃するためのIgE(アイジーイー)抗体というタンパクが体の中で多く作られるようになります。花粉によるアレルギー症状は、このIgE抗体が引き起こしているのです。
ゾレアはIgE抗体に対して働き、アレルギー反応の元をおさえることができるお薬です。
副作用はありますか?
最も多い副作用は、注射した部分が赤くなったり腫れたりすることです。
また、めまいや眠気が起こることがあるため、車の運転などをする場合には注意が必要です。
呼吸困難や血圧低下などを伴って急激に発症するアナフィラキシーを起こす可能性もゼロではないので、初めてゾレアを打った後はしばらく院内で様子を見ると安心です。
在宅自己注射はできますか?
花粉症の治療にゾレアを使う場合には、在宅自己注射はできません。
医療機関を受診して治療を受ける必要があります。
ゾレアによる治療を受けられるのはどんな人?
ゾレアは重症の花粉症に対して使うことができますが、重症の花粉症というのはどの程度の症状を指すのでしょうか。重症花粉症の目安は、次のような状態です。
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くしゃみ、または鼻をかむ回数が1日11回以上
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鼻づまりがひどく、口呼吸が1日のうちかなりの時間をしめる
さらに、次の条件を満たしている場合に、ゾレアによる治療を受けることができます。
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12歳以上
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体重が20kg~150kg
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前スギ花粉シーズンにも重症の症状が見られた
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スギ花粉のアレルギー検査が陽性
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花粉症治療を1週間以上行っても効果が不十分
ゾレアでの治療にかかる費用はどれくらい?
ゾレアは、これまでの治療法では効き目が不十分だった患者さんにも効果が期待できる反面、薬の値段が高いというデメリットがあります。ここでは治療にかかる費用について解説します。
治療にかかる費用は患者さんごとに違います
ゾレアは1回75~600mgを月に1~2回注射します。
どのくらいの量を月に何回打つかは、患者さんの体重やIgE抗体の量で決まります。
3割負担の方の場合、1か月の薬剤費は4,444円~69,952円となり、患者さん・症状によってかなり違いがあります。※ゾレアは非常に高額な薬剤のため、受診してからは原則キャンセルができないことをあらかじめご了承ください。
参考:ゾレアの薬剤費(ノバルティス ファーマ株式会社 HP)
https://www.okusuri.novartis.co.jp/xolair/pollinosis/medical-expenses/xolair
医療に関するさまざまな制度を利用できる場合も
医療機関で支払う1か月の自己負担額が一定額を超えた場合、高額療養費制度によって医療費の一部が払い戻される場合があります。
また、確定申告をすることで、医療費控除によって税金が安くなる場合もあります。
ゾレアでの治療を始めるまでのスケジュール
ゾレアでの治療を始める前には、花粉症の重症度を診断したり、飲み薬がどれくらい効くかを確かめたりするために、数回の受診が必要になります。
当院でゾレアでの治療を始めるまでのスケジュールを記載します。
①初診
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問診から花粉症の症状の程度を聞き、重症のスギ花粉症であるかを診断します。
まだ飲み薬や点鼻薬などでの治療を受けたことがない方には、飲み薬や点鼻薬などの治療を開始します。 -
血液検査で「非特異的IgE(総IgE濃度)」と「スギ特異的IgE」を測定します。
(過去1年以内に検査を施行したことのある方は、検査を省略することができるかもしれません。その際は検査結果をクリニックまでご持参ください)
②2回目の受診
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初診のときに処方された薬が効いているかを確認します。
薬の効き目が悪ければ「既存治療で効果不十分なスギ花粉症」と診断され、ゾレアの注射の適応となります。 -
初診で検査したIgE値と体重から、ゾレアの投与量・投与間隔を決定します。
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ゾレアは非常に高価な薬剤になるため、投与量や投与日を決定してから注射を発注します。
また、キャンセルは受け付けておりません。
キャンセルの場合は費用を全額ご負担いただいておりますので、あらかじめご了承ください。
③3回目の受診
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ゾレアの注射を開始していきます。わずかながらアナフィラキシーショックが起きる可能性もあるため、初回投与後は30分間院内で待機していただき、経過観察を行います。
④4回目以降の受診
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最初に決めた投与間隔に従って、ゾレアの注射を行っていきます。
ゾレア注射は、重度の花粉症症状でお悩みの方には大変効果の高い画期的な薬です。
ゾレアを注射することで、辛い花粉症の症状から解放されるかもしれません。
ゾレア注射にご興味のある方は、お気軽にご相談ください。
参考:ゾレアとは(ノバルティス ファーマ株式会社 HP)https://www.okusuri.novartis.co.jp/xolair/pollinosis/xolair