塩分を摂りすぎると高血圧になる理由をご存知でしょうか? 世界レベルで見ると日本人の塩分摂取量は多く、血圧が高くなくても塩分の摂りすぎには注意が必要です。
この記事では、塩分摂取量の現状と塩分を控えることによってもたらされる健康上の効果、高血圧の人が塩分を減らすための食事のコツなどについて、紹介します。
塩分過剰で高血圧になる理由
塩分を摂りすぎると、血中に塩分の成分の一つであるナトリウムが増えるため、体がナトリウムの濃度を下げようと水分を増やして取り込むようになります。その結果、血液の量が増えて血圧が上がります。塩分の摂りすぎは、若い人から高齢者まで健康に影響を与えるので、体質や年齢に応じた対策が必要です。
塩分と高血圧の関係
人間の体には塩分量を一定に保とうとする働きがあります。そのため塩分を多く摂りすぎると、体液(水分)を増やして塩分を薄めようとします。これにより血液量が増加して、血圧が上昇します。またナトリウムには交感神経を刺激し血管を収縮させ、血圧を上げるという働きもあります。
塩分に対する血圧上昇の反応は、人によって違い、反応しやすい人とそうでない人がいます。最近の研究では、反応しやすいかそうでないかという感受性には、遺伝や環境の影響があることが分かりました。
高血圧の2つのタイプ
高血圧には、塩分に反応しやすい「食塩感受性高血圧」とそうでない「食塩非感受性高血圧」の2つのタイプがあります。
食塩感受性高血圧では、塩分を多くとると腎臓の交感神経の働きが活発になり、塩分排出に関係する遺伝子の働きを抑制します。そのため血液中のナトリウム濃度が上昇し水分を引き込み、血液量が増加して、その結果、血圧が上昇します。
参考:Epigenetic modulation of the renal β-adrenergic-WNK4 pathway in salt-sensitive hypertension
食塩非感受性高血圧では、生体内で作られるタンパク質の一種アンジオテンシンⅡという物質が血管を収縮させることで血圧が上昇します。アンジオテンシンⅡの働きを阻害し、血圧上昇を防ぐ効果を持つのが、高血圧治療薬「アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬」です。
高齢者の場合の塩分と高血圧の関係
加齢とともに血中にある血管の収縮を抑えるタンパク質が減少します。そのため高齢者が若い頃と同じように塩分を摂取すると血管が収縮しやすくなり、高血圧を発症しやすくなると考えられています。
加齢とともに高血圧になりやすく、高齢な人ほど減塩が必要です。
参考:Salt causes aging-associated hypertension via vascular Wnt5a under Klotho deficiency
塩分摂取量の現状と塩分制限の効果
世界レベルで見ると日本人の塩分摂取量は多いので、血圧が正常な人でも塩分制限は必要です。
塩分摂取量の基準
日本高血圧学会は1日6g未満の塩分摂取量を推奨しています。しかし、世界レベルで考えると日本の塩分摂取レベルは高く、2021年における日本人の摂取量は1日あたり約10gでした。
日本では食塩の摂取量目安を男性1日7.5g未満、女性6.5g未満としていますが、世界保健機関ではすべての成人の減塩目標を5gにしています。
塩分制限の効果
1日の摂取量を6g未満に抑えると、塩分に反応しやすい食塩感受性タイプの高血圧患者には降圧効果がありますが、食塩非感受性タイプの高血圧の患者さんには効果はほとんどありません。
しかし、食塩非感受性タイプの人や血圧が正常な人であっても減塩は必要です。というのは、減塩をしないと、腎機能が低下してナトリウムの排泄がスムーズに行われなくなってしまったり、コレステロール値が上昇して血栓をできやすくしてしまったりするからです。
高血圧の人が塩分制限するための食事のコツ
高血圧の人が塩分制限する場合には、塩分が多い食事や料理を避け、塩分を控えた食事を摂るようにしましょう。
避けたい高塩分の食品・料理
以下のような食品や料理は塩分が多いので注意してください。
- カップめん
- きつねうどん
- にぎり寿司
- 天丼
- 塩ざけ
- カレーライス
- 梅干し
- たくあん
- ハム
- みそ汁
- ポタージュ
- あじの開き
製品や調理方法によって、多少の差があるので注意してください。
塩分を控えた食事のコツ
塩分を控えた食事のためには以下のようなことに配慮しましょう。
- 天然のだし、酢やレモンの酸味などを利用する
- 外食や加工食品を控える
- 減塩タイプの醤油や味噌を活用する
- カリウム豊富な食材は積極的に使う
減塩すると味が薄くておいしくないと思われがちですが、アクセントを加えたり、うま味をプラスしたりすると味を楽しめます。外食には塩分が多く含まれているので、注意が必要です。ナトリウムの排泄を促すカリウム豊富な食材は積極的に使うようにしましょう。ただし、腎機能が低下している場合は、カリウムの積極的な摂取は控えてください。
高血圧予防は塩分制限と生活習慣の改善が重要
高血圧の予防には、塩分を減らすだけでは不十分で、生活習慣の見直しも重要です。塩分を減らした食事を摂っていても、肥満、喫煙や過度な飲酒、運動不足、睡眠不足があると血圧は上がってしまいます。
持病のために十分に運動できない人は、その分食事や睡眠などに注意し、高血圧を予防しましょう。