糖尿病の検査では、主に血糖値(血液に含まれる糖の量)やインスリン(血糖値を下げるホルモン)の分泌量などの検査を実施します。その他にも腎臓や網膜、血管などで合併症が進行していないかの検査も必要です。
本記事では、採血や尿検査など糖尿病の基本的な検査をはじめとして、合併症の検査、血糖の目標値、検査に関する3つの疑問について解説します。
糖尿病検査と基準値
糖尿病検査では、主に採血による血液検査や尿検査などを実施します。ここでは、糖尿病の検査の詳細と基準値などを解説します。
血糖値・尿糖検査
糖尿病では、下記のような血糖値・尿糖の検査を実施します。
検査項目 | 詳細 | 正常型(正常基準値) | 糖尿病型(異常基準値) |
空腹時血糖値 | 検査当日朝食を食べていない状態の血糖値 | 110mg/dL未満 | 126mg/dL以上 |
随時血糖値 | 食後から時間を決めないで実施する検査 | – | 200mg/dL 以上 |
75gOGTT(経口ブドウ糖負荷試験) | 空腹時に75gのブドウ糖を飲み、血糖値の変化を見る検査 | 負荷後2時間値140mg/dL未満 | 負荷後2時間値200mg/dL以上 |
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー) | 1〜2ヵ月の血糖値の変動を見る検査 | 4.6~6.2% | 6.5%以上 |
GA(グリコアルブミン) | 1〜2週間前の血糖値の状況を見る検査 | 11~16% | 16.5%以上 |
1.5AG(アンヒドログルシトール) | 過去数日間の血糖の状況を反映する検査。健康であればほぼ一定の値を示す | 男性:14.9-44.7μg/mL女性:12.4-28.8μg/mL | 男性:15μg/mL以下 女性:12μg/mL以下 |
尿検査 | 尿の中にある糖(尿糖)を調べる検査。血糖値が160〜180mg/dLを超えると尿の中に糖が出る | 陰性 | 陽性 |
75gOGTTは糖尿病が疑われる方に対して行う検査です。既に糖尿病型の方には行いません。クリニックプラスでは、75gOGTTの検査は実施できません。クリニックプラスではHbA1c、空腹時血糖(随時血糖の場合もあります)にて糖尿病のコントロールをしています。
GAと1.5AGは、特殊な病態以外や治療開始後6ヶ月以内しか基本的にHbA1cと同時に検査はできません。継続して測定する場合は、病態によりHbA1cが治療の指標にならない場合に使用します。
インスリン検査
インスリン検査では下記のことを調べます。
CPR(C-ペプチド ) | 膵臓でインスリンが合成される際にできる副産物で、インスリンと同程度の割合で分泌されるタンパク質。分泌されたインスリンの指標になる |
血糖値とCPRを測定することによって、膵臓の健康度を見ることができます。高血糖なのにCPRが低い場合は膵臓が疲れている状態で、インスリンが出せなくなっている可能性があります。
食事療法や運動療法、薬物療法を組み合わせて治療することで、CPRが回復すると血糖コントロールも改善します。
糖尿病の合併症を調べる検査
糖尿病検査では、合併症の進行状況も調べます。例えば、糖尿病により腎臓の障害が起きていないかを見る検査項目は下記の通りです。
検査項目 | 詳細 | 正常基準値 | 異常基準値 |
タンパク尿 | 尿中に排出されたタンパク質の量を測定する検査 | 15mg/dL以下 | 30mg/L以上 |
尿中アルブミン値 | タンパク質の主成分であるアルブミンが尿中出ているか調べる検査。糖尿病性腎症の指標となる | 30mg/gCr未満 | 30mg/gCr以上 |
eGFR(糸球体ろ過量) | 糸球体(しきゅうたい)という腎臓のろ過機能を示す指標 | 60以上 | 60以下 |
タンパク質の主成分であるアルブミンが尿中に30mg/gCr以上検出されると、早期の糖尿病性腎症と診断されます。その後、タンパク尿が増加し大量のタンパクが尿中に漏れ出すようになると、腎機能も悪化し血液透析が必要になる場合もあります。
早期腎症の時にしっかり血糖コントロールをすると、タンパク尿も減り正常値近くまで戻すことが可能です。
糖尿病患者さんは脂質異常症(ししついじょうしょう)にも注意が必要です。糖尿病は、ただでさえ動脈硬化(どうみゃくこうか:血管の弾力性が失われていく症状)が進行しやすく合併症のリスクがあります。
脂質異常症を発症すると動脈硬化がさらに早く進行してしまうため、合併症のリスクが高まります。脂質異常症を発症していないかを知るために、LDL(悪玉)コレステロール値や中性脂肪値なども調べなければなりません。
糖尿病検査と血糖の目標値
糖尿病における血糖の目標値は、病気にかかっている期間や年齢、合併症の状況などを考慮して個別に設定する必要があります。下記のように治療の目標に応じて、数値は個別に設定します。
血糖値の正常化を目指す | 合併症の予防を目指す | 副作用等により治療を進めるのが困難である | |
HbA1c | 6.0%未満 | 7.0%未満 | 8.0%未満 |
例えば、HbA1cを7.0%未満に下げる場合の血糖値の目安は「空腹時血糖値130mg/dL未満」「食後2時間血糖値180mg/dL未満」です。これらの目標値を達成するためにも、定期的に検査をしながら、血糖値のコントロールをしなければなりません。
前述した通り血糖の目標値は、年齢や合併症の有無などによって変わります。糖尿病の方には4ヶ月に1度、療養計画書を診療時に作成しています。計画書作成時に目標となるHbA1cや血糖値、目標体重、目標腹囲などを提示します。
糖尿病検査に関する3つの疑問
ここでは下記の糖尿病検査に関する3つの疑問を解説します。
- 「糖尿病かも」と思ったら何科を受診する?
- 簡易検査キットの信頼性は?
- 検査費用や時間はどれくらい?
検査を受ける際の参考にしてください。
1.「糖尿病かも」と思ったら何科を受診する?
糖尿病は内科や糖尿病・内分泌内科などで診察してもらえます。より専門的な診察や検査を受けたい場合は、糖尿病・内分泌内科を受診しましょう。
2.簡易検査キットの信頼性は?
糖尿病の簡易検査キットが存在します。簡易検査キットは、自宅で簡易に血糖値、HbA1c、尿糖などを調べることが可能です。
尿糖程度ならば簡易キットでも良いと思われますが、簡易検査キットによる指先からの血液で測定する場合、血糖値、HbA1cは採血場所により誤差が出ます。正確な検査をするためには、病院で血液検査を受けることを推奨します。
3.検査費用や時間はどれくらい?
糖尿病の検査など受診のみにかかる費用の目安は下記の通りです。
内訳 | 10割 | 3割 | 1割 |
外来診療費用採血・尿検査費用 | 740円5860円 | – | – |
合計 | 6600円 | 1980円 | 660円 |
病状によりその他の検査費用や処方箋費、服薬管理指導費などがかかるため注意してください。検査にかかる時間は、検査の種類や医療設備、病状などによって異なります。
75gOGTTなどの検査が必要になった場合は、ブドウ糖を飲んだ30分後、60分後、120分後、場合によっては180分後まで複数回採血をすることがあります。どのタイミングで採血をするのか検査前に詳細な説明があるため、しっかり理解した上で検査を受けると良いでしょう。