脂質異常症の食事療法とは、エネルギーや脂質、炭水化物などの摂取量を適正にすることで、脂質異常症を改善する治療方法です。脂質異常症が改善できれば動脈硬化(血管が弾力性を失っている状態)の進行を抑えられます。
しかし、適切なエネルギー量や栄養の配分などは、専門的な知識が必要であるため医師の診察や評価が必要です。本記事では、脂質異常症の概要から効果、取り組み方、適切なエネルギー摂取量、食事療法のポイントまでを解説します。
脂質異常症の食事療法(高脂血症)とは?
脂質異常症の食事療法とは、血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪を減少させるための治療方法です。まずは、食事療法の効果と取り組み方に加えて、1日の適切なエネルギー摂取量について解説します。
食事療法の効果と取り組み方
適切な食事療法ができれば脂質異常症が改善して、心筋梗塞(しんきんこうそく)や脳梗塞(のうこうそく)などの合併症の予防が期待できます。食事療法は、3食バランスの良い食事を心がけることが大切で、常に厳しい制限が必要というわけではありません。
ただし、「食べ過ぎや飲み過ぎ」「野菜や魚をあまり食べない」など、患者さんの食生活や病状などにより食事療法は異なります。医師と相談しながら進めることが大切です。
適切なエネルギー摂取量
食事療法を進めるにあたって、適切なエネルギー摂取量を把握することは大切です。
一般的な摂取量の求め方は以下の通りです。
エネルギー摂取量の求め方 | 標準体重(Kg)×身体活動量(kcal) |
標準体重の求め方 | 身長(m)×身長(m)×22(体格指数の標準値) |
身体活動量の目安は以下の通りです。
- デスクワーク・主婦:25〜30kcal
- 立ち仕事の多い職業:30〜35kcal
- 力仕事の多い職業:35kcal
上記はあくまで一般的な算出方法です。1日の適切なエネルギー摂取量は、年齢や性別、病状などを踏まえて考える必要があります。医師に相談してエネルギー摂取量を決めてもらうことが大切です。
【タイプ別一覧表】脂質異常症の食事療法のポイント9選
食事療法のポイントをタイプ別に分けると以下のようになります。
項目 | 中性脂肪が高い | LDLコレステロールが高い |
---|---|---|
エネルギー | 適正な摂取量にする | 適正な摂取量にする |
栄養配分 | 適正な栄養配分にする | 適正な栄養配分にする |
脂質 | 脂質制限 | 脂質制限の強化 (エネルギーと比較して20%以下) |
炭水化物 | 炭水化物制限の強化 (エネルギーと比較して50%以下) | 炭水化物制限 |
コレステロール | コレステロールの制限 (1日300mg以下) | コレステロールの制限 (1日200mg以下) |
アルコール | アルコール制限 (25g以下) | アルコール制限 (25g以下) |
ここからは、脂質異常症の食事療法のポイントを具体的に解説します。
1.適正体重を目指す
適正な体重へ改善することで、LDLコレステロールや中性脂肪の減少だけでなく、HDL(善玉)コレステロールの増加が期待できます。HDLコレステロールは、血管の内側にたまったコレステロールを取り除く働きがあるため、動脈硬化の進行を抑えられます。
ただし過度なダイエットは、リバウンドを招くため注意してください。医師と相談しながら適切な食事療法や運動療法を進めることが大切です。
2.コレステロールの多い食べ物は控える
油物や脂身の多い食べ物はコレステロールを多く含み、LDLコレステロールを増加させます。具体的には脂身の多い肉、卵、魚卵、内臓類などです。特にLDLコレステロールが高い方は、コレステロール摂取量に注意が必要です。
3.油の質と量に注意する
調理に使うバターやラード、牛脂などに含まれる飽和脂肪酸(ほうわしぼうさん)は、LDLコレステロールを増加させます。
一方、魚油やえごま油などに含まれる多価不飽和脂肪酸(たかふほうわしぼうさん)はLDLコレステロールや中性脂肪の減少が期待できます。とはいえ、過剰摂取は健康に悪影響があるため注意してください。
4.炭水化物の摂りすぎに注意する
炭水化物の摂りすぎは、体重増加に加えて中性脂肪を増加させます。一食のお米の量はお茶碗1杯ほどにしておかわりは避けましょう。また、ご飯には玄米や大麦を入れたり、パンの場合はライ麦パンなどにしたりするのがおすすめです。
5.アルコールは適量にする
アルコールは肝臓で中性脂肪の合成を促進するため、適量でも中性脂肪を増加させます。1日の目安量は、日本酒の場合1合、ビールの場合中瓶1本程度が良いとされています。女性の場合はこの半分です。
お酒と一緒に食べるおつまみは、脂質や塩分を多く含むものが多いため注意が必要です。
6.菓子類の摂りすぎに注意する
菓子類は糖質を多量に含んでおり、中性脂肪を増加させます。間食をする場合は、果実や低脂肪ヨーグルト、または少量で満足感があるナッツなどがおすすめです。
清涼飲料水は、砂糖を多量に含んでいるため注意が必要です。飲み物も水や無糖のお茶などを選びましょう。
7.塩分の摂りすぎに注意する
塩分の摂りすぎは、脂質異常症と合併している場合が多い高血圧を悪化させます。高血圧が悪化すると、動脈硬化をさらに進行させて合併症のリスクが高まります。
高血圧を合併している方は、外食や漬物、加工食品を控えて塩分の摂取量を1日6g未満にとどめましょう。
8.食物繊維をたくさん摂る
食物繊維は、LDLコレステロールを減少させる効果が期待できます。具沢山のスープを作る、作り置きできる常備菜を用意する、などの工夫をすれば野菜をたくさん食べられます。
野菜ジュースは食物繊維が含まれておらず、甘味料が多く含まれている場合があるため注意が必要です。
9.魚や大豆製品を積極的に摂る
魚や大豆製品は、LDLコレステロールや中性脂肪の減少が期待できます。特に多価不飽和脂肪酸が多く含まれているサンマやサバ、ブリ、イワシなどの青魚がおすすめです。大豆製品では、食事には納豆、おつまみや間食には枝豆などを取り入れると良いでしょう。