「頭の片側がズキンズキンと痛い」「体を動かすと頭痛がひどくなる」などの症状は、片頭痛の可能性があります。
片頭痛は、悪化させる原因を把握して適切に治療することが大切です。
ここでは、片頭痛の概要から、悪化させる原因、症状、診断方法、治療方法、予防法、対処法までを解説します。
片頭痛のセルフチェック方法や受診の目安も解説していますので、「自分が片頭痛かわからない」「放っておいてもよい頭痛?」とお悩みの方は参考にしてください。
片頭痛(偏頭痛)とはどのような頭痛?
片頭痛は、日本で8.4%の人が発症している一次性頭痛(他の病気によるものでない頭痛)です。
10代〜30代後半までに多い頭痛であるため、高齢の方は別の頭痛として調べたほうがよいかもしれません。
片頭痛は前兆のある人とない人に分けられます。
痛みの程度や頻度、悪化の原因もさまざまであるため、その人の状況に合わせた適切な治療や管理が必要です。
なお、正しい漢字は、「偏頭痛」ではなく「片頭痛」です。
片頭痛を悪化させる原因は多岐にわたる
片頭痛は、脳内の血管が拡張することによって起こるとされてますが、その詳細なメカニズムはまだ完全には解明されていません。
神経系の異常や遺伝的要因が関与していると考えられています。
片頭痛を悪化させる原因や誘発する引き金を一部紹介すると次の通りです。
- ストレス:ストレスがかかっている時よりも、解放された時に片頭痛が起こりやすい
- 環境因子:天候や気圧の変化、強い光、騒音などの環境因子も片頭痛に影響を与える
- 不規則な生活:睡眠不足や寝過ぎ、食事を抜くなど
- 食事:空腹時や特定の食べ物(チョコレート、チーズ、ナッツ類など)が引き金になることがある
- 女性ホルモン:女性では月経周期に関連して片頭痛が起こりやすくなることがある
特徴的なのはズキンズキンとした痛み
片頭痛の特徴的な症状は、脈を打つようなズキンズキン、またはガンガンとした痛みです。
頭の片側(両側に起こることもある)のこめかみや、目の周囲に痛みが生じます。
痛みの持続期間は数時間〜2-3日で、何もできなくなるほど痛みが悪化する人や吐き気が伴ったり吐いてしまったりする人もいます。
前兆のある人は、頭痛が起こる前にちかちかする光が見えたり、視野の一部が見にくくなったりすることがあります。
症状から片頭痛をセルフチェックする方法
「吐き気をともなう頭痛である」「光・音に敏感になる」の片方あるいは両方に加えて、次の項目2つ以上が当てはまると、片頭痛の可能性があります。
- 頭の片側に痛みが発生する
- ズキンズキンと拍動性の痛みである
- 我慢できない、仕事などに支障をきたす
- 体を動かすと痛みが悪化する
片頭痛の診断方法は、前兆があるものとないものに分けられる
ここからは片頭痛の診断方法を解説します。頭痛の状況を把握しておくと診断の助けになります。
次の項目を参考にして、頭痛の状況を把握しておきましょう。
- 頭痛の頻度や痛みの程度はどれくらいか
- 頭のどこが痛むか
- どのような痛みか
- 頭痛にともない、他の症状はあるか
- 頭痛が起きる前に何か症状はあるか
前兆のない片頭痛
次に当てはまる場合は、前兆のない片頭痛です。
- 2-4をみたす頭痛発作が5回以上ある
- 頭痛の持続時間は4~72時間(未治療もしくは治療が無効の場合)
- 頭痛の特徴が以下の項目の2つ以上にあてはまる
- 片側だけ頭が痛い
- ガンガン拍動しているような痛み
- 中等度〜重度の痛み
- 歩行などの日常動作で頭痛が悪くなる
- 頭痛発作中に以下のいずれかの症状を認める
- 吐き気をもよおす、あるいは吐いてしまう
- 光や音で頭痛が増悪する
- その他の疾患によらない
前兆のある片頭痛
次に当てはまる場合は、前兆のある片頭痛です。
- 2-4を満たす頭痛発作が2回以上ある
- 以下の前兆のうち、少なくとも1つ以上を認め、運動麻痺(脱力)は伴わない
- 視覚症状(例:キラキラした光・点・線が見える、ギザギザに走る光が見える、周りがチラチラ光って中心が見えないなど)
- 感覚症状(例:チクチクする感覚が次第に顔面や身体に広がっていく、感覚が鈍くなる)
- 言語症状(例:言葉がうまく話せなくなるなど)
- 以下の項目のうち、少なくとも2つ以上あてはまる
- 視覚症状が両方の眼の同じ側に見える、または感覚症状が片側のみに起きる
- 前兆が5分以上かけて進展していく
- 前兆が続く時間は5分以上60分以内
- 他の疾患によらない
片頭痛の治療方法
片頭痛の治療は、薬による治療がメインです。軽度・中等度・重度に分けて薬を使い分けます。
吐き気などがある場合は、吐き気を抑える薬を適宜併用します。
頭痛の程度 | 総称または主成分 | 製品名 | 特徴 |
軽〜中等度 | アセトアミノフェン | カロナール | 効き目はマイルドで副作用が少ない |
NSAIDs (エヌセイズ) | ロキソプロフェン | すばやく効き効果も高い | |
中等度〜重度 または NSAIDsが効かない場合 | トリプタン (NSAIDsと併用) | イミグラン | 小児や妊婦も使用できる |
イミグラン点鼻液 | すばやく効き効果も長い | ||
ゾーミッグ | 効果は高いが、胸の締め付け感やフワフワ感がいくぶん多い | ||
レルパックス | いつの間にか効いているようなマイルドな効き方。胸の締め付け感なども少なく効果も長い。 | ||
マクサルト | すばやく効くが効果は短い | ||
アマージ | 効き始めは遅くマイルドに効く。効き始めると長く効く。胸の締め付け感やフワフワ感も少ない。 |
予防治療が適応となる場合は、「アジョビ皮下注射」という片頭痛の発作を予防するための注射を使用することもあります。
予防治療の適応となる人は、次のとおりです。
- 月に2回以上発作がある, あるいは生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある場合
- 急性期治療薬(トリプタンやNSAIDs)のみでは日常生活に支障がある場合
- 急性期治療薬を使用できない場合
- 永続的な神経障害をきたす恐れのある特殊な片頭痛の場合
予防薬には次のようなものがありますが、使用できない場合もあるため注意が必要です。
- デパケン:小児と妊婦は不可
- ミグシス:妊婦不可
- インデラル:喘息不可
片頭痛は悪化の原因を把握して予防するのが大切です。
片頭痛の起きる頻度や悪化の原因を把握するために、頭痛ダイアリーをお勧めする場合もあるかもしれません。
片頭痛は治せる頭痛になりつつあります。
可能な限り、頭痛の状況を説明できるようにして、治療の助けとしましょう。
片頭痛の予防法と対処法
片頭痛を管理するには、悪化の原因や誘発する引き金を理解することが大切です。
片頭痛を起こさないための予防、または起きてしまった場合の対処を適切に実施できるためです。
ここでは、片頭痛の予防法と対処法について解説します。
片頭痛を悪化させないための予防法
片頭痛を悪化させない・誘発させない予防法の一例は、次のとおりです。
- 睡眠の過不足を避け、適切な食事を心がけるなど生活習慣を整える
- 日差しが強い時はサングラスをかける
- 片頭痛を悪化させる食べ物を把握して避ける
前述した頭痛ダイアリーを取り入れるのも有効です。
頭痛ダイアリーに取り組むことで、生活習慣や生活環境、食事内容を見直す機会となるためです。
片頭痛が起きてしまった時の対処法
片頭痛が起きてしまった場合の対処法の一例は、次のとおりです。
- 頭を冷やす、または頭を温める
- 暗く静かな場所で安静にする
- 可能であれば一眠りする(寝すぎには注意)
- 一眠りできない場合は、椅子に座って静かにする
- 適切な鎮痛剤の使用
片頭痛の受診の目安
もし上記の片頭痛の症状がみられる場合は、すみやかに受診することをお勧めします。
片頭痛が疑われた方の当院での診療の流れ
1. 問診
頭痛の方を診断する場合、患者さんのお話が最も重要になってきます。
事前問診の内容に加えて、必要な情報を細かく聞いていきます。
2. 身体診察
頭痛の原因として、片頭痛や緊張型頭痛以外の重篤な病気が隠れていないかなど、診察を行います。
この時点で、髄膜炎や脳出血などの重篤な病気が疑われた場合には、すぐに専門の医療機関をご紹介します。
3. 薬の処方
特に検査が必要になることは少ないです。
重症度にあった飲み薬の治療を開始していきます。
頭痛を繰り返すような方は定期的な通院も必要になります。
頭痛でお悩みの方は、我慢をせずにクリニックを受診しましょう。
クリニックプラスは平日20時まで、土日祝日も診療しています。お気軽に相談にいらしてください。