虫垂炎(ちゅうすいえん)とは、盲腸の下部にある虫垂に炎症が生じる病気です。
幅広い年齢で発症しますが、10代から20代で多くみられます。
お腹の痛みや吐き気などの初期症状がみられ、痛みを放置すると重症化する可能性があります。
ここでは、虫垂炎の症状、治療について解説します。
虫垂炎とは?
虫垂炎は、正確には「急性虫垂炎」という病名になります。
大腸の一部である虫垂に炎症が生じることで起こり、主な症状は、お腹の痛み・吐き気・発熱です。
虫垂とは?
右の下腹部に、大腸の始まりである盲腸があります。
盲腸から下の方に細長く伸びた小さな臓器があり、これが虫垂で、大腸の一部分になります。
どんな人がなりやすい?
虫垂炎は幅広い年齢で発症しますが、10代から20代の若い世代で発症することが多い病気です。
性別は関係ないといわれています。
虫垂炎の原因
虫垂炎の原因は全て解明されていませんが、以下のような要因が挙げられます。
- 虫垂の入口が閉塞したり圧迫されたりすることで、虫垂の中で細菌やウイルスが繁殖して炎症が起こる
- 便秘
- 食生活の乱れや運動不足、ストレス
硬くなった小さな便の塊(糞石 ふんせき)や、消化されなかった食物の種や金属などが虫垂の入口を塞いでしまい、虫垂炎になることがあります。
また、リンパ組織の腫れや腫瘍などが原因で、虫垂を圧迫し血流が悪くなり、炎症が起こることもあります。
便秘の場合は、溜まった便が虫垂を圧迫したり、排出されずに硬くなった便が虫垂の入口を塞いだりするので要注意です。
食生活の乱れや運動不足、ストレスなどが原因で、虫垂炎になる可能性もあります。
虫垂炎の症状
虫垂炎の主な症状は、お腹の痛みや吐き気、発熱です。
症状だけでは他の病気との判別が難しいことも多く、痛みを我慢したり放置したりすると重症化し、まれに命の危険にさらされることもあるので注意が必要です。
初期症状
虫垂炎の初期症状は、へその周りやみぞおちなどのお腹の中心部分の痛み、お腹が張ったような不快感です。
はじめは、特定の場所というよりは、お腹全体にこのような痛みや不快感が生じ、次第に吐き気や食欲不振も現れてきます。
それから数時間後には、痛みがお腹の右下部分に移動し、そのままにしていると徐々に激しい痛みに変わっていきます。
放置して炎症が進むと
痛みを我慢したり放置したりすると、炎症がさらに悪化し、発熱がみられるようになります。
お腹の右下部分の痛みだけでなく、押さえて離した後、急に痛みが強くなるような反跳痛(はんちょうつう)がみられることもあります。
また、症状が進行すると、虫垂に穴が開き(穿孔 せんこう)、細菌などがお腹の中に広がって腹膜炎(ふくまくえん)を起こす場合があります。
咳をしたり歩いたりした時に痛みが強くなる場合には、腹膜炎の可能性もあるので早めに医師の診察を受けましょう。
虫垂炎の検査
虫垂炎の検査は、以下を行います。
- 血液検査
- CT検査
血液検査
血液検査では、白血球数(WBC)や、C反応性蛋白(CRP)の値を確認します。
これらの値が高ければ体内で炎症が起きていることがわかりますが、これだけでは虫垂炎と診断できないので、他の検査と併せて行われます。
CT検査
CT検査では、虫垂が腫れていないか、虫垂の周りに炎症が広がっていないか、虫垂の中に糞石がないか、虫垂が穿孔していないかなどを確認します。
虫垂炎の治療
虫垂炎の主な治療は、薬物療法か手術に大別されます。
薬物療法
軽症の場合は、まず薬物療法が選択されます。
感染している細菌に対して、抗菌薬の点滴あるいは内服を使用して治療します。
症状が強い場合や、再発を繰り返すような場合では、手術による治療を検討します。
手術
中等度以上の症状や、緊急性のある場合には、手術を行います。
手術も腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)と開腹手術の2通りがあり、症状や合併症のリスクなどによってどちらの手術を行うか選択されます。
腹腔鏡下手術は、比較的負担の少ない手術です。
お腹に小さな穴を開け、そこからカメラや手術用の機械を挿入して手術を行います。
腹膜炎を起こし、炎症がお腹の中に広がっている場合などは、腹腔鏡下手術ができないこともあります。
開腹手術では、虫垂のある部分を切開して手術を行います。
手術をして経過が良好であれば、術後1週間前後で退院できます。
症状によっては、抗生剤や鎮痛薬を使って炎症が落ち着いてから手術することもあり、発見が遅れると重症化して治療が長引く可能性があります。
症状がある場合には、できるだけ早く医師の診察を受けるようにしましょう。
虫垂炎は何科を受診したらいい?
虫垂炎は、お腹の痛みや吐き気などから始まるため、まずは内科を受診しましょう。
これらの症状がある場合には、他の病気の可能性も否定できません。
内科を受診し、虫垂炎と診断されてから外科を受診することも少なくありません。
お腹の痛みがひどい場合は、緊急を要するので、救急外来を受診しましょう。
虫垂炎の疑いで来院された方の、当院での診療の流れ
1. 問診
いつからどのような症状が出ているか、診断・治療に必要な情報を集めるために、医師がいくつか質問します。
(LINEの事前問診にお答えいただきますと、よりスムーズな診療を提供できますのでご協力ください)
2. 身体診察
虫垂炎に特徴的なお腹の痛みがないかを、触診で確かめます。
その他にも、虫垂炎以外の病気が考えられないかなど、医師が丁寧に診察を行います。
3. 検査
虫垂炎が疑われた場合、採血検査やCT検査などを行います。
CT検査は正確に評価するために、お腹の中が空っぽの状態で行う必要がありますので、虫垂炎が疑われる場合は食事をせずに受診してください。
4. 処方(重症の場合は専門医療機関へ紹介)
虫垂炎と診断されて症状が軽度であれば、抗菌薬による治療(点滴もしくは内服)から開始する場合があります。
症状が重度の場合や、再発を繰り返しているような場合では、手術を検討する必要がありますので、速やかに専門医療機関へ紹介いたします。
虫垂炎は、早期に適切な治療を開始することで良好な経過を辿りますが、治療が遅れることで重症化したり、命の危険にさらされたりすることがあるので注意が必要です。
虫垂炎が疑われた際には、速やかにクリニックを受診するようにしましょう。
クリニックプラスは平日20時まで、土日祝日も毎日診療しています。お気軽に相談にいらしてください。