ノロウイルスは冬の胃腸炎の最も多い原因の1つで、激しい下痢や腹痛・嘔吐(おうと)のような非常に辛い症状を引き起こします。
症状への対応も大切ですが、感染力が強いため、周りに感染を広げないようにする取り組みも重要になります。
ノロウイルス感染症の特徴や、感染を広げないための注意点などについて解説します。
ノロウイルス感染症とは
ノロウイルスはどのようなウイルスで、どのように感染するのでしょうか。
まず初めに、ノロウイルスによる感染症の特徴について解説します。
ノロウイルスってどんなウイルス?
ウイルスの中でも特に小さなウイルスで、いくつかの型があり、感染すると急性の胃腸炎を引き起こします。
感染力が非常に強く、わずかなウイルス量でも胃腸炎を発症します。
現在のところ、ノロウイルスに対するワクチンはありません。
潜伏期間はどのくらい?
ウイルスが体の中に入ってから症状が出るまでの期間を、潜伏期間(せんぷくきかん)といいます。
ノロウイルスの場合、潜伏期間は1~2日と短いのが特徴です。
どこから感染するの?
ノロウイルスはほとんどが経口感染(けいこうかんせん)で、次のような感染経路が考えられます。
- ノロウイルスに感染した人の便や嘔吐物からの感染
- ノロウイルスに感染した人が調理した料理を食べることによる感染
- ノロウイルスに汚染されたカキなどの二枚貝を、生の状態または加熱不十分な状態で食べることによる感染
- 家庭・学校・職場などでの、人から人への飛沫感染(ひまつかんせん)
- 便や嘔吐物中のノロウイルスが乾燥し、小さな粒子(エアロゾル)となって空気中に舞い、それを吸い込むことによって起こるエアロゾル感染
このように、さまざまな感染経路があるため、どこから感染したかを特定することが難しいという問題があります。
流行しやすいのはいつ?
ノロウイルス感染症は1年を通して発生していますが、特に流行しやすいのは冬です。
11月頃から増加し始め、12~1月が流行のピークとなります。
ノロウイルス感染症の症状
ノロウイルスは人の腸に感染し、一気に増えるため、吐き気・嘔吐・下痢・腹痛のような胃腸症状が現れます。
微熱や頭痛・悪寒など、軽い風邪のような症状が出る場合、また、まれではありますが、感染しても症状が出ないこともあります。
ノロウイルス感染症の症状は1~3日でおさまることがほとんどで、後遺症などの心配もありません。
しかし、小さなこどもや高齢者の場合は、ひどい下痢による脱水症状で入院したり、吐いたものをのどに詰まらせてしまったりすることがあるため注意が必要です。
ノロウイルス感染症の治療
ノロウイルスに感染した場合、どのような治療を行うのでしょうか。
また、感染を広げないようにするためには、いつまで注意する必要があるのでしょうか。
どんな治療法があるの?
現在のところ、ノロウイルスに対して有効な薬はありません。
そのため、脱水を防ぐための水分補給や、体力を消耗させないための栄養補給が治療の中心となり、脱水がひどい場合には点滴を行います。
下痢止めを使うと回復が遅れることがあるため、使わないことが望ましいとされています。
症状がおさまった後も感染力はある?
症状は1~3日でおさまりますが、その後もノロウイルスは2週間ほど体の中に存在し、便とともに排出されます。
そのため、症状がおさまった後も、しばらくは周りの人への感染に気をつける必要があります。
周りの人への感染を防ぐために
ノロウイルスは感染力の強いウイルスです。
家族などの周りの人への感染を防ぐため、次のようなことに一緒に取り組むようにしましょう。
- トイレの後や食事の前の手洗いを徹底する。
石けんは十分に泡立て、流水でしっかりと流し、清潔なタオルで拭くようにする。 - 症状があるときはもちろん、症状がおさまった後も2週間ほどは直接食品に触れないようにする。
- 便や嘔吐物を片づけるときは、ウイルスを吸い込まないようにマスクをし、窓を開けて換気を行う。
ビニール手袋をはめ、使い捨てのペーパータオルなどを利用して処理をする。 - 汚染された床・トイレ・ドアノブなどを拭き取るときは、塩素系漂白剤をしみ込ませた布を使う。
ノロウイルス感染症かなと思ったら
場合によっては「ノロウイルス抗原検査キット」を使って検査をすることがありますが、通常は症状や感染状況から、ノロウイルス感染症であると予測して治療が行われます。
ノロウイルス感染症の疑いがある場合には、脱水症状などを起こさないよう、早めにかかりつけ医にご相談ください。
ノロウイルス感染症の疑いで来院された方の、当院での診療の流れ
1. 問診
原因となる様な食べ物を食べたりしていないか、周りに同様の症状を発症している方はいないか、その他何か原因として思い当たることはないかなど、診断・治療に必要な情報を集めるために、医師がいくつか質問します。
(LINEの事前問診にお答えいただくと、よりスムーズな診療を提供できますのでご協力ください)
2. 身体診察
必要があれば診察室のベッドに横になり、お腹の音を聞いたり、痛む場所がないかなど診察します。
ノロウイルス感染症以外の病気が隠れていないかなども判断していきます。
※お腹を出しやすい服装で来院されることを推奨します。
3. 検査
医師が必要と判断した場合には、検査を行うこともあります。当院で実施できる検査は以下になります。
◆血液検査
◆便培養検査・ノロウイルス迅速検査
4. 処方・点滴
ノロウイルス感染症の治療で最も重要なことは、脱水の予防になります。
下痢や嘔吐を1日に何回も繰り返している方、水を飲むとすぐに吐いてしまう方は、点滴の治療を行います。
症状がそこまでひどくない場合は、医師に処方された薬を飲んで数日経過をみていただくことになります。
薬を飲んでも症状が改善しない場合は、再度受診ください。
ノロウイルス感染症以外の病気も考えられますので、当院でより詳しい検査を行うか、あるいはさらに大きな検査を実施している医療機関をご紹介することもあります。
また、他者への感染のリスクもあるため、ご家族間の共用トイレは清潔を心がけ、感染の防御を徹底しましょう。
ノロウイルス感染症は、放置しておくと重篤な脱水症をきたす恐れがありますので注意が必要です。
ノロウイルス感染症が疑われた際には、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
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