伝染性単核球症(でんせんせい たんかくきゅうしょう)という感染症の名前を聞いたことがありますか?
あまり聞き慣れない病気かもしれませんが、熱やのどの痛みが長く続く、疲労感がひどいという場合、伝染性単核球症である可能性があります。
伝染性単核球症の症状は風邪などと似ているため気づきにくく、知らないうちに人へうつしてしまう可能性があります。
感染予防や重症化対策のためにも、早期に診断を受けることは大切です。
ここでは、伝染性単核球症の特徴や治療について解説します。
伝染性単核球症ってどんな病気?
伝染性単核球症とはどのような病気なのでしょうか。
まず初めに、伝染性単核球症の特徴や症状・原因について解説します。
伝染性単核球症とは?
伝染性単核球症は主に、ヘルペスウイルスの一種であるEBウイルスに感染することで発症する感染症です。
感染者の血液の中に、単核球という白血球が多くみられるために、伝染性単核球症という病名がつきました。
キスを介してうつることから、俗に「キス病」といわれることもあります。
予後は良好な疾患で、数週間から数か月で自然に治ることがほとんどです。
EBウイルスの他、サイトメガロウイルスやHIVウイルスが原因で発症することもありますが、頻度としてはまれであるため、ここではEBウイルス感染の場合について解説していきます。
伝染性単核球症の症状
EBウイルスによる伝染性単核球症の主な症状は、次の4つです。
①長引く疲労感
②38度以上の発熱
③のどの痛み
④リンパ節の腫れ(主に首のリンパ節)
他に、頻度はそれほど高くありませんが、脾臓や肝臓の腫れ、発疹が見られることもあります。
風邪だと思っていたら熱がなかなか下がらないということで、不安になって受診するケースも多いです。
発症しやすい年齢は?
10代~20代の若年層に多くみられる疾患です。
EBウイルス感染症自体は、成人までにほとんどの人が感染するといわれているほど一般的な感染症です。
乳幼児の場合、感染しても症状が出ないことがほとんどですが、思春期以降に初感染した場合、伝染性単核球症を発症しやすくなります。
潜伏期間はどれくらいですか?
EBウイルスに感染してから症状が出るまでの潜伏期間は4週間~6週間と、比較的長いのが特徴です。
キス以外でもうつりますか?
「キス病」と呼ばれることもある伝染性単核球症ですが、キス以外でもうつることはあります。
キス以外の感染経路は、次のとおりです。
・咳やくしゃみ、会話の際に飛び散る唾液
・飲み物の回し飲み、食べ物の口移し、箸やスプーンの共用
・まれに輸血
伝染性単核球症の検査と診断
伝染性単核球症の症状は他の病気でもよく見られるものです。
そのため、症状だけでは見過ごされてしまいがちですが、首のリンパの腫れが見られる場合には特に伝染性単核球症を疑う必要があります。
確定診断は血液検査によって行います。
EBウイルスに対する抗体の量を測定したり、白血球(単核球)の増加具合を確認したりします。
伝染性単核球症の治療
伝染性単核球症と診断された場合、どのような治療を行うのでしょうか。
どのように治療しますか?
EBウイルスに効く薬はありません。
そのため治療は安静と、症状を和らげる対症療法となります。
<治療に使われる主な薬剤>
・解熱鎮痛薬…熱を下げ、頭痛や関節痛を和らげます
・抗炎症薬、トローチ剤…のどの痛みを和らげます
発症後の1~2週間は、疲労感が特に強く出るため安静が必要です。
脱水症状を起こさないよう、水分はしっかり摂るようにしてください。
のどの痛みがひどくて水分も摂れないような場合には受診するようにしましょう。
解熱して倦怠感がおさまれば、徐々に活動量を増やしても問題ありません。
ただし、脾臓が腫れている場合は脾臓が破裂する恐れがあるため、腫れが引いていることが確認できるまで、人と接触するようなスポーツは避けるようにしてください。
どのくらいで治りますか?
症状が続く期間は人によってさまざまですが、安静と対症療法により、多くの場合2~4週間で自然と治ります。
ただし、疲労感だけはさらに数週間~数か月続く場合もあります。
まれに重症化することも
まれではありますが、のどの腫れが悪化し、空気の通り道である気道が塞がって、呼吸困難になってしまうような場合があります。
そのような場合、すぐに救急を受診するようにしてください。
こんなときは一度受診を
風邪だと思って様子を見ていたけれど、熱やのどの痛み、疲労感がなかなか良くならない、いつもの風邪と何か違う気がする、というような場合、伝染性単核球症の可能性があります。
一度受診し、検査を受けることをおすすめします。
また、診断後の療養中であっても、のどの痛みで水分が摂れない場合や症状がどんどん悪化していくようなときには、再度受診するようにしましょう。
伝染性単核球症の疑いで来院された方の、当院での診療の流れ
①問診
いつからどの様な症状が出ているか、診断・治療に必要な情報を集めるために、医師がいくつか質問します。
(LINEの事前問診にお答えいただくと、よりスムーズな診療を提供できますので協力ください)
②身体診察
のどの所見をみたり、リンパが腫れていないかなど、医師が丁寧に診察を行います。
③検査
伝染性単核球症が疑われた場合には、血液検査を行います。
結果が出るまでには1週間程度かかります。
④処方(重症の場合は専門医療機関へ紹介)
伝染性単核球症の治療は基本的には対症療法になります。症状を改善するための薬を処方致します。
重症感が強い場合には、画像検査など更なる精査が必要な場合もありますので、中核病院へ紹介することもあります。
風邪をひいたとおもったがなかなかよくならない、首のリンパがはれている、そういった場合には伝染性単核球症の可能性があります。
血液検査で診断が可能ですので、ご心配な方は医療機関を受診するようにしましょう。
クリニックプラスは平日は20時まで、土日祝日も毎日診療しています。
伝染性単核球症を疑うような症状がありましたら、まずはお気軽にご相談にいらしてください。