1日に50~100本程度の髪が抜けるのは正常で、時期によっても波があるといわれています。
しかし、髪を洗ったときに異常に髪が抜ける、髪をとかしたときにゴソッと抜ける、という経験をして不安に感じている方もいるかもしれません。
ここでは、髪が抜ける疾患にはどのようなものがあるのか、それぞれの疾患の特徴や治療について解説していきます。
髪が抜ける疾患
髪が抜ける症状をメインとする疾患には、以下のようなものがあります。
- 円形脱毛症
- 女性慢性びまん性脱毛症
- 分娩後脱毛症(産後脱毛)
- 男性型脱毛症(AGA)
円形脱毛症
円形脱毛症は、頭部の一部で円形に髪が抜け落ちる疾患ですが、抜け落ちる形や場所は様々です。
円形ではなく楕円形だったり、脱毛部分が何か所にも及んだり、生え際に沿って抜け落ちるケース、脱毛が頭部全体に広がるケース、髪だけでなくまつ毛や眉毛、体毛などに及ぶケース等もあります。
原因は免疫の異常といわれています。ストレスやウイルス、細菌感染がきっかけになり、免疫の働きが自身に向いてしまう自己免疫反応が起きて、脱毛の症状が現れます。
円形脱毛症は年齢性別を問わず誰でも発症します。小さな脱毛斑が現れて、そのまま自然によくなるケースもあります。
しかし、再発しやすいのも円形脱毛症の特徴で、何度も再発を繰り返してしまう場合や悪化している場合には早めに医療機関で受診することをお勧めします。
治療としては、脱毛を抑える・育毛を促す塗り薬の塗布や、局所へのステロイド注射などがあります。
内服や外用、注射、紫外線療法など様々な方法をご自身にあった形で治療をすすめていきます。
女性慢性びまん性脱毛症
女性慢性びまん性脱毛症は、女性ホルモンのバランスや遺伝が関係しているといわれています。
その他にもストレスや過度なダイエットによる栄養不足なども要因のひとつです。
40~50代の女性に多く、頭部全体の髪が徐々に薄くなり、髪は細くて切れやすいものに変化していきます。
症状は特に頭頂部で顕著に現れます。
女性慢性びまん性脱毛症の治療には、外用薬のミノキシジルや内服薬のパントガールといった薬が用いられますが、なかなか治らないこともあります。
分娩後脱毛症(産後脱毛)
産後は髪が抜けることが知られており、分娩後脱毛症、産後脱毛、といわれています。
ホルモンバランスの乱れが原因で、産後徐々に抜け毛が始まり、産後3~6か月で抜け毛のピークを迎えます。
個人差はあるものの、おおよそ1年程度で元に戻るといわれています。
妊娠中は女性ホルモンが増えることで髪の成長が促進されます。
しかし、出産後はホルモン値が元に戻ることで休止期に入る髪が増え、一気に毛が抜けてしまいます。
子育てによるストレスや睡眠不足、母乳を与えることで栄養がとられてしまうということも、産後に脱毛が進行する要因となります。
産後脱毛を改善するための特別な治療薬はなく、時間とともに自然に改善されます。
日頃の食事や睡眠といった生活習慣にも気をつけるようにしてください。
男性型脱毛症(AGA)
男性型脱毛症は、Androgenetic Alopeciaの頭文字をとり、AGAと呼ばれます。男性ホルモンによる脱毛症、という意味です。
日本人成人男性の3人に1人がAGAで悩んでいるともいわれています。
20歳代以降に発症することが多いといわれていますが、早い人だと10代、遅いと50~60代で発症することもあります。
額の生え際、頭頂部から少しずつ薄くなり、徐々に範囲が広がっていくのが特徴です。
治療は投薬(飲み薬・外用薬)・植毛・頭皮に薬を注射する方法、と大きく3つに分けられ、最も一般的なのは投薬治療です。フィナステリドといった内服薬や、外用薬のミノキシジルが使われます。
また植毛は効果的な方法とされ、自毛植毛は診療ガイドラインでも推奨されています。
気になる症状があればまず受診を
脱毛にもいろいろな原因・病気があり、効果的な治療があるものもあれば自然に経過をみるものまで様々です。
適切なタイミングで効果的な治療を受けるためには、気になった時点で早めに医療機関で受診するようにしてください。
大きな病気が隠れていることもあるかもしれませんので、自己判断はしないことをお勧めします。