突然の動悸、ドキドキが始まるとびっくりしてしまうでしょう。動悸は不整脈と呼ばれる症状のひとつです。不整脈は動悸の他、めまいや息切れなどをもたらすことがあります。ほとんどの場合、突然死などの、命に関わることはありません。今回は動悸症状がでる不整脈のうち、心房粗動と呼ばれる状態について、原因や治療など踏まえて解説していきます。
心房粗動とは
心房に起因する不整脈である心房粗動について解説していきます。
心房粗動とは
心房粗動は心臓の心房に原因がある不整脈のひとつで、1分間に150回程度の速さで同じ間隔、規則的に拍動がおきます。動悸は突然始まり、突然終わります。
心房細動との違い
心房細動と心房粗動の大きな違いは、脈がバラバラか一定かということです。また、心電図の検査でみた場合、心房粗動では、鋸歯状波(きょしじょうは)と呼ばれるノコギリの刃みたいな形の特徴的な波形がみられます。心房細動と心房粗動、両方の不整脈をもっている方もおり、区別がつきにくいこともあります。
心房粗動の原因
心房粗動の原因、発作が起こるきっかけについて解説していきます。
原因疾患
年を取るに従い、心房粗動の罹患率は高くなっていきます。そのほかにも心筋梗塞などの虚血性心疾患の既往や弁膜症、心臓病手術の既往がある方は心房粗動になりやすいといえるでしょう。心房粗動の方では甲状腺機能亢進症などの基礎疾患がみられることもあります。
生活習慣の乱れがきっかけになる
高血圧などの生活習慣病は心房粗動発症のリスクになります。また、アルコール摂取や寝不足、脱水などがきっかけとなり心房粗動の発症につながることもありますので注意が必要です。
心房内の異常な電気回路
心房粗動は、心房にある三尖弁(さんせんべん)という弁の周りに電気回路ができることによって、心臓内に通常とは異なる電気の流れができるために起こります。心房粗動が起きているときは、1分間に300回程度の速いペースで心房が動いており、多くはその半分の頻度で心室に電気信号が伝わり、概ね1分間に150回程度の速い脈が生じます。
心房粗動の症状
心房粗動の症状についてみていきます。
動悸
心房粗動の発作が起きたときの一番の自覚症状は、動悸です。脈は1分間に50~100回が通常の速さで、大半が1分間に60~80回程度の範囲内に留まります。ところが心房粗動の発作が起きると、1分間に150回程度と脈が速くなり、強い動悸をもたらします。動悸症状は突然始まり突然終わります。
その他
全く心房粗動が出ていることに気づかない、無症状の方もいます。そのほかにも、息切れや不快感、胸痛や倦怠感といった症状も心房粗動の症状としてみられます。
心房粗動の検査
心房粗動を疑うときに行う検査について解説していきます。
心電図
動悸症状で病院を受診したときにまず行う検査は心電図です。
ホルター心電図
心房粗動が起きているときに心電図をとることができれば診断は可能です。
心臓超音波検査
心房粗動がある方は背景に心臓病が隠れていることがあるため心臓超音波検査を行います。また、心房粗動が続いていると、心臓内に血栓ができることがあり、血栓の有無を確認するために経食道心臓超音波検査を行うこともあります。
心房粗動の治療
心房粗動の治療について解説していきます。
原因となる病気の治療
甲状腺機能亢進症などの病気があることによって心房粗動が起きてしまうことがあります。基礎疾患がある場合にはそちらの治療を優先して行うことで心房粗動の発生を防ぐことができるかもしれません。
薬物治療
心房粗動では心房内に血栓ができてしまうことがあります。血栓は脳血管に詰まることで脳梗塞の原因になります。血栓ができやすい方で心房粗動を発症した場合には、血栓予防のために血液をサラサラにする抗凝固薬を内服するのが通常です。
心房粗動の発作が出ないようにするために抗不整脈薬などを使用することもありますが、薬によるコントロールは難しいとされています。また、心房細動を止めるために抗不整脈薬を使うことで心房粗動になってしまうケースもあります。
電気ショック
不整脈を止めるために電気ショック(体外式除細動)を行うこともあります。その際には、心臓内に血栓がないことを確認してから行います。
カテーテルアブレーション
カテーテルアブレーションは、心房粗動の原因となっている異常な回路を、カテーテルを使って焼き切る手術です。
典型的な心房粗動に対するカテーテルアブレーションは、成功率が95%と高いうえに再発も少なく、根治を見込めることから第一選択となっています。
心房粗動を放っておくとどうなる
心房粗動の発作がでることで不安になる方もいるでしょう。実際に心房粗動をそのままにしておくとどうなるのでしょうか。
緊急性はない
心房粗動の不整脈発作がおきると突然動悸が始まることで不安になってしまう方もいると思いますが、すぐに命の危険にさらされる様な病気ではありません。落ち着いて、かかりつけ医がいるのであればかかりつけ医、いないのであれば循環器内科を標榜しているクリニックを速やかに受診する様にしましょう。とくに、すでに心房粗動と診断されている方は、慌てる必要はありません。
診断は、不整脈発作が起きている最中の心電図が決め手になります。
心房粗動で死ぬことはない
心房粗動は心房の不整脈です。心房性不整脈が起こることで直接死亡に至ることはありません。ただし、心房内で血栓ができて、それが脳に飛んでしまうと、脳梗塞となり、手足に力が入らなくなるなどの恐ろしい病気につながる恐れがありますので、心房粗動を疑う様な動悸症状を自覚したら、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
心不全となる可能性
頻脈の状態が長期間続くことで心臓に負担がかかり、心不全となる可能性があります。特にもともと心臓に病気がある方などは不整脈が心不全のきっかけとなることがあるので注意が必要です。
クリニックプラスでの心房粗動の診療の流れ
①問診
症状についてお話をききます。事前にLINE問診であらかじめお答えいただくと、診察がスムーズに行われます。この時点ですでに発作が起きているような状態の場合には、細かい問診を省略してすぐに検査に移行することもあります。
②身体診察
聴診器を用い、心臓の音や呼吸音に異常がないかを確認します。
③検査
心電図検査を行います。心電図検査にて、心房粗動を認めないものの、心房粗動を強く疑う症状のある方は、24時間心電図(ホルター心電図)の検査を勧めさせていただく場合もあります。心房粗動の症状が出現してから長時間経過しているような場合には、心房内に血栓が形成されていないかを確認するために、心エコー検査を行う場合もあります。
④内服薬や点滴による治療
診察中に発作が起きているような場合には、点滴の抗不整脈薬にて加療を行う場合もあります。来院時発作が起きていない場合は、発作時に内服していただく薬を処方致します。
⑤専門病院への紹介
心房粗動の治療にはカテーテルアブレーションが有用です。カテーテルアブレーションの治療を多く行なっている大学病院や総合病院を紹介させていただきます。クリニックプラスは多くの大学病院や総合病院と連携をとっておりますので、速やかに紹介することが可能です。
突然心臓がドキドキするような場合には、心房粗動を発症しているかもしれません。クリニックプラスでは循環器内科専門医による診療を、スピーディに受けることができます。また、事前LINE問診や、事前クレカ決済システムなど、テクノロジーを活用することで待ち時間を少しでも短くし、通院しやすい体制を整えています。ご心配な方はぜひ一度相談にいらしてください。