突然心臓の鼓動が速くなり、ドキドキという動悸(どうき)症状がしばらく続いたと思ったら急におさまった、そのような経験はありませんか?それは発作性上室性頻拍(ほっさせいじょうしつせいひんぱく)という不整脈による症状かもしれません。発作性上室性頻拍は、命に関わることはまれですが、動悸症状が強く出るため、頻繁に起こると日常生活に支障を来してしまいます。発作性上室性頻拍に対する適切な治療を受けられるよう、病態や治療について詳しく解説します。
発作性上室性頻拍とは
まず初めに、発作性上室性頻拍の病態や症状について解説します。
発作性上室性頻拍とは
心臓の上の部屋である心房が関与する不整脈で、何の前触れもなく突然脈拍が速くなり、その状態がしばらく続いた後、突然おさまるのが特徴です。。発作時の脈拍は1分間に150~200回くらいになります。脈は速くなっても乱れはなく、規則的に脈を打っていることが多いです。どの年齢でも起こり得る不整脈で、子どものころから発作があるという方も少なくありません。発作がすぐに命に関わるということは無いですが、長時間発作が持続することで心臓の機能が落ち、心不全に陥ることがごくまれにあります。
発作性上室性頻拍の原因
通常心臓は、心臓の上部にある「洞結節(どうけっせつ)」から送られる電気信号によって、規則正しく鼓動するように制御されています。この電気信号には決まった通り道があります。しかし、発作性上室性頻拍では、正常な通り道とは別の通り道ができてしまい、そこを電気信号が通ることで脈が速くなってしまうのです。
発作性上室性頻拍の症状
突然感じる動悸が代表的な症状です。前触れなくいきなり脈が速くなり、動悸を自覚します。また、胸の不快感や息切れ、めまい、血圧の低下を伴う場合もあり、重症の場合は失神してしまうこともあります。
発作性上室性頻拍には3種類ある
発作性上室性頻拍は、そのメカニズムから、「房室結節リエントリー性頻拍」、「房室リエントリー性頻拍(WPW症候群)」、「心房頻拍」の3つに分けられます。それぞれについて解説します。
房室結節リエントリー性頻拍
発作性上室性頻拍の原因として最も多く、約50%を占めます。電気信号を伝えるための通り道が、速度の速いものと遅いものと2通りできてしまい、電気信号がこれらの通り道をぐるぐる回ることにより頻脈が生じます。このように電気信号がぐるぐる回ることをリエントリーといいます。
房室リエントリー性頻拍(WPW症候群)
発作性上室性頻拍の約40%を占めます。生まれつき、正常な電気信号の通り道とは別の通り道(副伝導路)が心臓に存在することで、心臓を動かすための電気信号が心臓内をぐるぐる回り、頻脈を起こします。
心房頻拍
発作性上室性頻拍の約10%を占めます。心房の一箇所に、速い速度で興奮する心筋ができることで発症します。
発作性上室性頻拍の検査と診断
心電図検査で診断を行います。発作が起きていないときの心電図は正常であることが多いため、発作が起きているときの心電図が必要になります。発作時に病院で心電図検査を行うことが難しい場合には、24時間ホルター心電図を使用します。
発作時の心電図がなかなかとれない場合でも、症状から発作性上室性頻拍が強く疑われるときには、カテーテルを使った誘発試験を行うこともあります。
発作性上室性頻拍の治療
発作性上室性頻拍と診断された場合には、どのような治療を行うのでしょうか。発作性上室性頻拍の治療について解説します。
迷走神経(めいそうしんけい)を刺激する
迷走神経という神経を刺激することで頻脈がおさまることがあります。これには次のような方法が取られます。
- 横になり、強くいきんだり、息をこらえたりする
- 氷水を入れた洗面器に顔をつける
- 冷たい水を飲む
これらは発作が起こってすぐに行うのが最も効果的です。
薬による治療
迷走神経を刺激する手技を行っても発作がおさまらない場合には薬を使用します。頻脈を止めるための薬にはベラパミルやATPがあります。ATPは血管を拡張させるため、注射をすると全身がカッと熱くなるような感覚になりますが、即効性があり、頻脈はすぐにおさまります。ぜんそくのある方には使うことができないため注意が必要です。
カテーテルアブレーション
薬でのコントロールが難しい場合や、発作時の症状が強く日常生活に支障を来しているような場合にはカテーテルアブレーションで根治を目指した治療が行われます。カテーテルアブレーションは心臓に電極付きのカテーテルを挿入し、高周波によって発作性上室性頻拍の発生源を焼き切る方法です。治療は麻酔をかけて行い、治療時間は2~3時間ほどです。4~5日の入院が必要となります。
再発はする?
発作性上室性頻拍に対してカテーテルアブレーションを行った場合の再発率は5~10%程度といわれており、そのほとんどが6ヵ月以内にみられます。そのため、カテーテルアブレーション実施後6ヵ月までに発作がなければ根治と考えて良いでしょう。
クリニックプラスでの発作性上室性頻拍の診療の流れ
①問診
症状についてお話をききます。事前にLINE問診であらかじめお答えいただくと、診察がスムーズに行われます。この時点ですでに発作が起きているような状態の場合には、細かい問診を省略してすぐに検査に移行することもあります。
③身体診察
聴診器を用い、心臓の音や呼吸音に異常がないかを確認します。
④検査
心電図検査を行います。心電図検査にて、発作性上室性頻拍を認めないものの、発作性上室性頻拍を強く疑う症状のある方は、24時間心電図(ホルター心電図)の検査を勧めさせていただく場合もあります。
⑤内服薬や点滴による治療
診察中に発作が起きているような場合には、点滴の抗不整脈薬にて加療を行います。来院時発作が起きていない場合は、発作時に内服していただく薬を処方致します。
⑥専門病院への紹介
発作の頻度が頻回の場合や、日常生活に支障が出るほどの症状を認めるような場合には、カテーテルアブレーションも検討し、大学病院や総合病院を紹介させていただくこともあります。クリニックプラスは多くの大学病院や総合病院と連携をとっておりますので、速やかに紹介することが可能です。
突然心臓がドキドキするような場合には、発作性上室性頻拍がでているかもしれません。クリニックプラスでは循環器内科専門医による診療を、スピーディに受けることができます。また、事前LINE問診や、事前クレカ決済システムなど、テクノロジーを活用することで待ち時間を少しでも短くし、通院しやすい体制を整えています。ご心配な方はぜひ一度相談にいらしてください。