冠動脈硬化症(かんどうみゃくこうかしょう)という言葉はあまり耳にすることがないかもしれません。冠動脈硬化症は、心臓を取り巻く動脈が硬くなったり狭くなったりする病気です。初期にはほとんど症状がなく、動悸(どうき)や息苦しさ、胸の不快感などの症状が出た段階で気づくことが多く、気づいたときにはかなり進行してしまっています。放置すると狭心症(きょうしんしょう)や心筋梗塞(しんきんこうそく)といった命に関わる病気を引き起こしてしまう危険性があります。そうならないようにするためには、日々の生活習慣が非常に大切になります。ここでは冠動脈硬化症の特徴や治療について詳しく解説します。
冠動脈硬化症ってどんな病気?
冠動脈硬化症とはどのような病気なのでしょうか。まず初めに、冠動脈硬化症の特徴について解説します。
冠動脈とは
冠動脈は心臓の表面を覆っている血管で、心臓の筋肉に血液や酸素を送る役割を果たしています。冠動脈から血液を受け取ることで心臓は動くことができるのです。
冠動脈硬化症とは
冠動脈に起こる動脈硬化のことを冠動脈硬化症といいます。動脈硬化は、血管の内側に粥腫(じゅくしゅ)と呼ばれるコレステロールのかたまりができ、血管の中が狭くなって血液の流れが悪くなった状態です。冠動脈硬化症では粥腫によって冠動脈の中が狭くなるため、心臓に十分な血液を送ることができなくなります。
進行するとどうなるの?
冠動脈の中が多少狭くなっただけでは症状は出ません。しかし、冠動脈硬化症が進行して冠動脈の内側が75%以上ふさがってしまうと胸に圧迫感や締め付け感といった症状が出始めます。これを狭心症(きょうしんしょう)といいます。さらに進行して冠動脈の内側がよりふさがってしまい、血流が悪くなると、心臓を動かしている筋肉は血液や酸素を受け取れず、筋肉細胞が死んでしまう心筋梗塞を引き起こします。心筋梗塞は命に関わる重大な病気です。このように冠動脈硬化症は、狭心症や心筋梗塞の原因となるのです。
冠動脈硬化症の主な原因は生活習慣
冠動脈硬化症の発症率は年齢とともに高まります。加齢によって血管が老化していくのはある意味仕方がないことです。しかし、冠動脈硬化症の原因は加齢だけではありません。食べ過ぎや運動不足、喫煙やアルコールの過剰摂取など、生活習慣が大きな原因となるのです。また、こうした生活習慣が原因となって発症する糖尿病や高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病も、動脈硬化を引き起こす原因となります。そのため、冠動脈硬化症の治療には生活習慣の改善が不可欠となります。
冠動脈硬化症の症状
冠動脈硬化症の怖いところは、「気づきにくい」ところにあります。初期には症状がなく、気づかないうちに進行し、突然狭心症や心筋梗塞を引き起こします。そのため「サイレントキラー(沈黙の殺人者)」などと呼ばれているのです。
冠動脈硬化症が進行し、狭心症や心筋梗塞になると、胸の締め付け感や圧迫感、胸痛や息苦しさなどの症状が出ます。
冠動脈硬化症の検査と診断
まず、コレステロール値、血糖値、血圧、体重測定などの検査を行い、冠動脈硬化症の危険因子がどのくらい存在するかを調べます。
冠動脈硬化症がどの程度進んでいるかは、冠動脈CT、冠動脈造影(カテーテル検査)などの検査で調べます。
冠動脈硬化症の治療
冠動脈硬化症と診断された場合、どのような治療を行うのでしょうか。最後に、冠動脈硬化症の治療について解説します。
冠動脈硬化症の治療目標は?
冠動脈硬化症の治療目標は、狭心症や心筋梗塞への進展を防ぐことです。そのために、これ以上動脈硬化を進行させないように治療を行います。
冠動脈硬化症の治療
冠動脈硬化症の治療の基本は、原因となっている生活習慣を改善することです。冠動脈硬化症の治療のために、日常の中で次のようなことに注意するようにしましょう。
①禁煙する
タバコに含まれるニコチンは血管に悪影響をおよぼします。1日に吸うタバコの本数が多いほど、また喫煙歴が長いほど動脈硬化が進行するリスクは高くなります。喫煙は、動脈硬化の原因となる高血圧や糖尿病のリスク因子でもあります。冠動脈硬化症の治療には禁煙は必須となります。
②食生活を改善する
- 動物性脂肪の多い食品の摂りすぎに注意し、暴飲暴食をしない。
- 動脈硬化の危険因子である高血圧症や糖尿病予防のため、塩分や糖分を控える。
- キノコ類や海藻、野菜や果物など、食物繊維やビタミンを含む食品を多く摂る。
- アルコールの過剰摂取を控える
③適度な運動をする
ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動を15~30分程度、週3日ほど行うようにする。
④薬による治療
すでに糖尿病や高血圧症、脂質異常症などがある場合には、薬による治療も併せて行います。
冠動脈硬化症の治療はこうした日々の生活習慣の積み重ねが最も重要なのです。主治医と相談しながら取り組んでいくようにしてください。
クリニックプラスでの冠動脈硬化症の診療の流れ
①血圧や脈拍、血中酸素飽和度の測定
受付を済ませた方は看護師が声をかけますので、血圧や脈拍、血中酸素飽和度を測定させていただきます。
②問診
症状についてお話をききます。初診の方は基礎疾患の有無や嗜好品の有無、家族歴についても聴取します。事前LINE問診であらかじめお答えいただくと、診察がスムーズに行われます。
③身体診察
聴診器を用い、心臓の音や呼吸音に異常がないかを確認します。その他、足の浮腫みなど心不全症状がでていないかなど、医師が丁寧に診察を行います。
④検査
採血検査や心電図検査、胸部レントゲン検査、心臓超音波検査(心エコー検査)などを行います。また、必要に応じて心臓のCTスキャンを行い、冠動脈の狭窄の程度を評価します。
⑤薬の処方及び生活指導
薬の治療で経過をみていくことが可能と判断した場合、定期的に当院循環器専門外来を通院していただき、薬の管理を行っていきます。また、冠動脈の狭窄の進行を予防するためには塩分制限や運動など生活習慣の改善が非常に重要です。日々の塩分摂取量をコントロールするための栄養指導や運動の指導を行っていきます。
⑥専門病院への紹介
カテーテル検査が必要と判断した場合には、専門的な入院加療がうけられる、大学病院や総合病院へ紹介します。クリニックプラスは多くの大学病院や総合病院と連携をとっておりますので、速やかに紹介することが可能です。
冠動脈硬化症は放置しておくと命に関わる重要な病気です。早め早めの予防対策が必要です。クリニックプラスでは循環器内科専門医による診療を、スピーディに受けることができます。また、事前LINE問診や、事前クレカ決済システムなど、テクノロジーを活用することで待ち時間を少しでも短くし、通院しやすい体制を整えています。ご心配な方はぜひ一度相談にいらしてください。