狭心症は、症状の出方によって安定狭心症と不安定狭心症に分類されます。安定狭心症では心筋梗塞を発症する危険性は低いものの、悪化すると心筋梗塞を招きやすい不安定狭心症へと進展してしまいます。病気の進行を遅らせて心筋梗塞を予防し、予後を改善することができるよう、ここでは安定狭心症の特徴や治療について解説します。
安定狭心症とは
まず初めに、安定狭心症の特徴について解説します。
狭心症とは
心臓を動かす筋肉のことを心筋(しんきん)といい、心筋は冠動脈(かんどうみゃく)から血液を受け取っています。冠動脈は心臓の周りに巻き付くように存在している血管ですが、なんらかの原因によって冠動脈の内側が狭くなると、血流が悪くなり、心筋に十分な血液や酸素が供給されなくなります。その結果、一時的に胸の痛みや圧迫感が生じる病気が狭心症です。
安定狭心症と不安定狭心症
数ヶ月以上、発作の状況に大きな変化が無い状態を安定狭心症といいます。一方、発作の回数が増えたり症状が強くなったりするなど、状態が悪化している場合を不安定狭心症といいます。安定狭心症ではすぐに心筋梗塞を起こす可能性は低いですが、不安定狭心症ではそのリスクが高まります。
安定狭心症の原因
次に、安定狭心症の原因について解説します。
原因の多くは動脈硬化(どうみゃくこうか)
安定狭心症の主な原因は動脈硬化です。動脈硬化により、冠動脈の内側には、かさぶたのような膜で覆われたコレステロールのかたまりができます。これを粥腫(じゅくしゅ)といいます。粥腫によって冠動脈の内側が狭くなって血流が悪くなり、狭心症の症状が現れるのです。安定狭心症の場合、粥腫の膜の状態はもろくならずに安定しているため、発作の頻度や強さにもほとんど変化はなく一定です。
動脈硬化の危険因子は?
次のようなものが、動脈硬化の危険因子となります。
- 加齢
- 脂質異常症
- 高血圧
- 糖尿病
- 喫煙
こうした危険因子が多いほど動脈硬化は早く進み、狭心症を引き起こす原因となるため注意が必要です。
安定狭心症の症状
安定狭心症の症状にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは安定狭心症の症状の特徴について解説します。
初期には無症状
狭心症は、冠動脈の内側が一定以上狭くなって初めて症状が現れます。それまでは無症状であるため、症状が出たときには冠動脈の内側はかなり狭くなってしまっています。
発作は労作時に起こりやすい
安定狭心症は多くの場合、階段をのぼったり重いものを持ったりするなどの労作時に起こります。体を動かすことで心筋はより多くの血液や酸素を必要としますが、冠動脈が狭くなっているため、血液や酸素の供給が間に合わずに胸痛などの症状が出るのです。安静にすると数分から15分ほどで症状はおさまります。
安定狭心症の場合、毎回同じくらいの強度の労作で症状が出るため、ある程度発作の予測や予防が可能です。しかし進行すると、少しの労作や安静時でも症状が出たり、発作の持続時間が長くなったりするなど、不安定狭心症へと移行してしまいます。そうなると心筋梗塞を起こすリスクも高まるため注意が必要です。
症状の特徴
多くは労作時に起こります。締め付けられるような胸の痛みが特徴です。胸の圧迫感や詰まり感として感じられることもあります。「ここが痛い」と指さしできるような痛みではなく、胸やみぞおちに漠然とした痛みを感じます。痛みは放散するため、首やあご、頬や歯の痛みとして訴える患者さんもいます。
投薬や安静によって数分で痛みはおさまります。
安定狭心症の検査と診断
安定狭心症は、安静時には検査で異常が見つからない場合が多いため、運動をしながら心電図検査を行う運動負荷試験が有用です。その他、次のような検査も行います。
- 心臓CT検査:冠動脈がどれくらい狭くなっているかを調べます。
- 心臓カテーテル検査:冠動脈のどこが狭くなっているかを調べます。
安定狭心症の治療
最後に、安定狭心症の治療について解説します。
安定狭心症の治療目標は?
安定狭心症の治療の目標は、心筋梗塞の発症を予防することです。また、狭心症の症状を抑えて生活の質を向上させることも大切な目標の1つとなります。
薬による治療
冠動脈の血流を改善させたり心筋梗塞を予防したりする目的で、血管拡張薬やベータ遮断薬、抗血小板薬などの薬剤が使われます。
発作時にはニトログリセリンを使います。舌の下に入れて溶かすことで速やかに効果が現れ、冠動脈が広がり症状がおさまります。
動脈硬化を予防するために
狭心症の悪化や心筋梗塞を予防するためには、その原因となっている動脈硬化の進行を抑えることが重要になります。禁煙は必ず行い、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病がある場合にはしっかりと治療を行うようにしましょう。
その他の治療法
冠動脈が細くなっている部分をバルーンで広げるカテーテル・インターベンション治療や、足や胸の血管を使って迂回路を作るバイパス手術なども行われることがあります。
こうした治療により細くなった冠動脈を広げても、再び細くなってしまうこともあります。再発を防ぐためにも治療は継続的に行い、定期的に受診をして経過を観察していくことが重要です。
クリニックプラスでの安定狭心症の診療の流れ
①血圧や脈拍、血中酸素飽和度の測定
受付を済ませた方は看護師が声をかけますので、血圧や脈拍、血中酸素飽和度を測定させていただきます。
②問診
症状についてお話をききます。初診の方は基礎疾患の有無や嗜好品の有無、家族歴についても聴取します。事前LINE問診であらかじめお答えいただくと、診察がスムーズに行われます。
③身体診察
聴診器を用い、心臓の音や呼吸音に異常がないかを確認します。その他、足の浮腫みなど心不全症状がでていないかなど、医師が丁寧に診察を行います。
④検査
採血検査や心電図検査、胸部レントゲン検査、心臓超音波検査(心エコー検査)などを行います。また、必要に応じて心臓のCTスキャンを行い、冠動脈の狭窄の程度を評価します。運動負荷心電図検査は当院では行っておりませんので、必要と判断した場合には専門医療機関へ紹介致します。
⑤薬の処方及び生活指導
薬の治療で経過をみていくことが可能と判断した場合、定期的に当院循環器専門外来を通院していただき、薬の管理を行っていきます。また、冠動脈の狭窄の進行を予防するためには塩分制限が非常に重要です。日々の塩分摂取量をコントロールするための栄養指導や運動の指導を行っていきます。
⑥専門病院への紹介
カテーテル治療が必要と判断した場合や、緊急での治療を要すると判断した場合には、専門的な入院加療がうけられる、大学病院や総合病院へ紹介します。クリニックプラスは多くの大学病院や総合病院と連携をとっておりますので、速やかに紹介することが可能です。
安定狭心症は早めに対策を講じることで、心筋梗塞などの重篤な疾患の発症を予防することができます。クリニックプラスでは循環器内科専門医による診療を、スピーディに受けることができます。また、事前LINE問診や、事前クレカ決済システムなど、テクノロジーを活用することで待ち時間を少しでも短くし、通院しやすい体制を整えています。ご心配な方はぜひ一度相談にいらしてください。