突如急激に発症する心不全のことを急性心不全といい、重症の場合は意識障害になり、命の危険も伴います。しかし、早い段階で医療機関で適切な処置を受け、退院後も心臓に負担をかけないような生活を送ることで、予後は改善されます。ここでは急性心不全の特徴や治療法、予防のためにできることなどについて詳しく解説します。
急性心不全とは
心臓の役割は、ポンプのように全身に血液を送り出すことです。何らかの原因により心臓の働きが弱まり、ポンプの役割を十分果たすことができなくなった状態を心不全といいます。
心不全はその発症のスピードから、急性心不全と慢性心不全に分けられます。急性心不全はその名のとおり急に発症するものです。心臓のポンプの働きが急激に悪化することでさまざまな症状が出ます。一方で慢性心不全では、心臓に負担がかかり続けることで徐々に症状が進行します。
急性心不全の予後は?
病気の進行具合や生きられる確率のような見通しのことを「予後」と言います。急性心不全は急激に発症して突然死の原因となることもあり、生命予後は良いとはいえません。しかし、初期の治療を迅速に行い、急性期を脱した後の慢性期の治療を適切に行うことで、予後を改善させることができます。
急性心不全の原因
急性心不全の原因にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは急性心不全の原因について解説します。
慢性心不全の急激な悪化によるもの
もともと慢性心不全の状態にある場合、その急激な悪化によって急性心不全となることがあります。慢性心不全が重症化すると、急性心不全を何度も起こして入院を繰り返すようになってしまいます。慢性心不全の患者さんは、急性心不全を起こさないように状態をコントロールしていく必要があります。
その他の心臓の病気が原因となって起こるもの
急性心不全を引き起こす病気には次のようなものがあります。
・急性心筋梗塞(きゅうせいしんきんこうそく)
・急性心筋炎(きゅうせいしんきんえん)
・心臓弁膜症(しんぞうべんまくしょう
この中でも急性心不全の原因として最も多いのは、突如発症する急性心筋梗塞によるものです。
急性心不全の症状
急性心不全の症状にはどのようなものがあるか、前兆となる症状があるのかについて解説します。
激しい呼吸困難が代表的な症状
急性心不全の症状には次のようなものがあります。
・激しい呼吸困難
・咳込み
・呼吸をするときにヒューヒュー、ゼイゼイと音がする
・胸部の痛み
・圧迫感
・むくみ
・血圧の低下
・脈拍数の増加
・意識障害
中でも呼吸困難は代表的な症状と言われています。また、多くの場合で血圧の低下を伴います。
前兆となる症状はあるの?
急性心不全の前兆となる症状はほとんど無く、突然発症するのが特徴です。
急性心不全の検査
症状や病歴、全身状態から、心筋梗塞による急性心不全が疑われる場合は緊急のカテーテル治療を必要とする場合があります。また、次のような検査を行って心臓の状態を確認し診断します。
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心電図検査
心筋梗塞、不整脈の有無を確認します。 -
心エコー検査
心肥大、心筋梗塞、弁膜症の有無を確認します。 -
胸部レントゲン検査
心臓の拡大、うっ血や胸水の有無を確認します。 -
血液検査
BNPというホルモンの値を測ります。このホルモンは心臓に負担がかかると血液中の
濃度が上がるため、心臓の機能低下の早期発見にもつながります。
急性心不全の治療
救命措置が最優先です。まずは呼吸困難を改善させるため、酸素の投与を行います。
血圧が低い場合には血圧を上げる昇圧剤を使います。心不全では血液の流れが滞ってしまう、うっ血という状態が起こります。強心薬で心臓のポンプの働きを補助し、利尿薬や血管拡張薬で血液の循環を促すことによりうっ血を改善させます。
急性心不全の原因が心筋梗塞である場合には心臓カテーテル手術を、心臓弁膜症である場合には弁の修復や取り換えの手術をするなど、原因となっている病気の治療を行います。
急性心不全の予防のために
急性心不全を予防するためには、次のような、心臓への負担を減らす取り組みを日常的に行うことが必要です。高齢の方や慢性心不全のある方、急性心不全の原因となる病気のある方は特に注意が必要です。
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高血圧の予防や治療
高血圧があると心臓に常に負担がかかり、心不全を引き起こしやすくなります。 -
急性心不全の原因となる病気の治療
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塩分を控えた食事
塩分の摂りすぎにより体内に水分がたまりやすくなり、むくみの原因となります。塩分は1日6グラム以下に制限することが望ましいです。 -
適度な運動
心臓に負担がかからない程度に適度に体を動かすことは、心不全の予防につながります。 -
禁煙
喫煙は心筋梗塞の大きな原因の1つであり、急性心不全を引き起こしやすくなります。急性心不全の予防に禁煙は欠かせません。
これらのことに日頃から気を付け、気になる症状がある場合にはすぐに受診をするようにしましょう。早期の治療介入が予後改善の鍵となります。
クリニックプラスでの急性心不全の診療の流れ
①血圧や脈拍、血中酸素飽和度の測定
受付を済ませた方は看護師が声をかけますので、血圧や脈拍、血中酸素飽和度を測定させていただきます。血中酸素飽和度が低い方は既に酸素療法が必要な状態であるため、原因の特定を急ぎます。
②問診
症状の詳細を聞きます。患者さんからのお話に診断のためのヒントが隠されているため、丁寧に問診をとります。
③身体診察
聴診器を用い、心臓の音や呼吸音に異常がないかを確認します。その他、足に浮腫みがでていないかなど、医師が丁寧に診察を行います。
④検査
採血検査や心電図検査、心臓超音波検査(心エコー検査)などを行います。心エコー検査は心不全を診断するにあたってとても重要な検査です。心エコー検査にかかる時間は5分程度で、心不全の状態をその場で評価し、結果をお伝えすることができます。
⑤薬の処方及び生活指導
外来診療で治療が可能と判断した場合、血圧を下げる薬や、利尿剤などの薬を用いて、治療を行っていきます。また、心不全の管理をする上で、塩分制限や水分制限が非常に重要です。日々の塩分・水分摂取量のコントロールや体重測定などの指導を行っていきます。
⑥専門病院への紹介
酸素の投与が必要な方や、点滴での治療が必要な方は、専門的な入院加療がうけられる、大学病院や総合病院へ紹介します。クリニックプラスは多くの大学病院や総合病院と連携をとっておりますので、速やかに紹介することが可能です。
急性心不全は早期治療介入がとても重要です。クリニックプラスでは循環器内科専門医による診療を、スピーディに受けることができます。クリニックプラスでは、事前LINE問診や、事前クレカ決済システムなど、テクノロジーを活用することで待ち時間を少しでも短くする取り組みを行っています。また、平日は夜の8時まで、さらには土日祝日も毎日営業することで、通院しやすい体制を整えています。息切れや浮腫みでお悩みの方はぜひ一度相談に来てください。