※現在、クリニックプラスでは「新起立試験」や「ヘッドアップティルト試験」を受けることはできません。これらの検査を希望される方は、専門の医療機関を受診ください。
・起立性調節障害とは?
起立性調節障害は自律神経がうまく働かなくなることで起きる病態です。自律神経には血管の太さを縮めたり、拡張させたりする働きがあります。この自立神経がうまく働かなくなると、起立時に血管が十分に収縮せず、足に溜まった血液を上に持ち上げることができなくなり、脳への血流を十分に維持することができなくなります。
・どんな症状がでますか?
起立性調節障害の方は下記のような症状がでることがあります。
◆頭痛
◆立ちくらみ、めまい
◆湿疹
◆朝起きられない
◆夜眠れない
◆腹痛、吐き気、食欲不振
小学校高学年~高校生くらいの思春期に発症することが多いです。中学生の10人に1人は起立性調節障害にかかっているとも言われています。症状の出現の仕方には個人差があり、上記症状のうち1つだけが表れる人もいれば、複数個同時に表れる人もいます。思春期の間に改善する方も多いですが、改善するまでに数ヶ月から数年かかる方もいます。大人になって悩んでいる方も決して珍しくはありません。
起立性調節障害の方は、午前中に調子が悪いく、午後になると徐々に体調が回復してくることが多いです。また、季節の変わり目だったり、雨の日や台風・梅雨の時期など低気圧になる時に特に調子が悪くなります。また、夏は暑い日が続くことから血管が拡張気味になったり、脱水傾向になったりすることで、症状の増悪を認めます。長時間の立位も血圧が下がったり、目の前が真っ暗になったりする原因になります。
・起立性調節障害の6つのサブタイプ
起立性調節障害は起立後の血圧や心拍数の変動から、6つのサブタイプに分類されます。
①起立直後性低血圧
6つのタイプのうち、最も多いのがこれです。起立直後に一過性の強い血圧低下があり、同時に強い立ちくらみと全身倦怠感を訴えます。血圧回復時間が25秒以上であればこのタイプです。軽症型と重症型がありますが、起立時の血圧低下が15%以上低下し、25秒以上持続する場合、重症型です。
②体位性頻脈症候群
2番目に多いのがこのタイプです。こちらは起立時に血圧低下はなく、頻脈やふらつき、だるさ、頭痛などの症状がおこります。起立時の心拍数が115以上、または起立中の平均心拍数増加が35以上あれば、こちらと診断できます。
③血管迷走性失神
起立中に突然血圧が低下し、症状が出現します。発作時に徐脈といって、脈が遅くなることもあります。失神の原因として、よく挙げられます。
④遷延性起立性低血圧
起立直後の血圧は正常ですが、起立数分以降に血圧が徐々に下降し、収縮期血圧が15%以上、または20mmHg以上低下します。静脈系の収縮不全が原因と言われています。
⑤起立性脳循環不全型
起立中の血圧心拍変動は正常範囲内ですが、起立中に脳血流が低下し、様々な症状が生じます。診断には脳循環を測定する特殊な機器が必要で、当院では診断することができません。
⑥高反応型
起立直後に一過性の著しい血圧上昇を起こし、それに伴う様々な症状が出現します。これも起立性脳循環不全型と同様に、診断には特殊な装置が必要で、当院では診断することができません。
・どんな検査を行いますか?
起立性調節障害は自律神経の異常からおきる病態であり、除外診断(症状の原因となる疾患を全て否定した上で得られる診断)が基本になります。血液検査や心電図検査、超音波検査などを行い、症状の原因となる病気が隠れていないかを調べます。他の病気の可能性がないと判断されたら、下記のチェックリストを用いて問診を行います。
①立ちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい
②立っていると気持悪くなる、ひどくなると倒れる
③入浴時あるいは嫌な事を見聞きすると気持ちが悪くなる。
④少し動くと動悸あるいは息切れがする。
⑤朝なかなか起きられず午前中は調子が悪い
⑥顔色が青白い
⑦食欲不振
⑧へその周りが時々痛い
⑨だるい。あるいは疲れやすい。
⑩頭痛
⑪乗り物に酔いやすい
上の11項目うち3つ以上当てはまるかたは起立性調節障害を疑います。
また、6つのサブタイプの分類や、起立性調節障害の診断のための検査に、「新起立試験」や「ヘッドアップティルト試験」などがあります。これらの検査は、体の不調が顕著となる時間帯である早朝や午前中に受ける必要があるため、前泊入院して早朝に検査を行うことが多いです。よってクリニックプラスでは、「新起立試験」や「ヘッドアップティルト試験」を受けることはできません。これらの検査を希望される方は、専門の医療機関を受診ください。
・どんな治療を行いますか?
起立性調節障害は自立神経の乱れから引き起こされる疾患です。重症度にもよりますが、以下のような方法で治療を行っていきます。
①ライフスタイルの見直しとストレスの解消
自律神経の乱れはストレスや生活習慣の乱れから起きていることが多いです。規則正しい生活をすぐに開始していくことは難しいかもしれませんが、まずは意識するところから始めましょう。毎日15-30分程度の散歩など、無理ない範囲で運動不足を解消していくことも重要ですし、適度な運動は睡眠不足の解消にもつながります。早寝早起きを頑張って心がけましょう。また、心理的・身体的ストレスの原因が明らかな場合は、それを取り除けるように調整してみましょう。
②非薬物療法
上記のストレス解消やライフスタイルの見直しに加えて、日常生活上のちょっとした工夫で症状の出現をある程度抑制することが可能です。
以下のような工夫が挙げられます。
◆座位や臥位から起立するときには、頭を下げてゆっくり起立しましょう。
◆立ったままじっとしている状態を1-2分以上続けない様にしましょう。
◆多めの水分摂取を心がけましょう。1日1.5-2リットルが目安です。
◆毎日15-30分程度の歩行を行い、筋力の低下を防ぎましょう。
◆眠くなくても、ベッドに入る時間が遅くならないようにしましょう。
③薬物療法
症状が重度の場合非薬物療法に加えて、薬物療法も併用することで症状の改善を得ることができます。人によっては漢方薬が奏効することもあります。
④定期的な通院
重症度によって治療期間は異なりますし、一度改善しても再発する可能性もあります。クリニックに定期的に通院することで、投薬治療をうけられる他に、症状に対する不安感やストレスの除去にもつながります。クリニックプラス下北沢は土日祝も営業しておりますし、平日は仕事終わりでも受診可能な20時まで営業しております。また、予約制でお待たせ時間も少ないことから、病院受診での無駄なストレスもかかりません。いつでもお気軽にご相談にいらしてください。
・起立性調節障害(起立性低血圧)で来院された方の当院での診療の流れ(診察所要時間目安:10〜20分)
1. 問診
まず普段から認めている症状としてどのようなものがあるか、診断・治療に必要な情報を集めるために、医師がいくつか質問します。(LINEの事前問診にお答えいただきますと、よりスムーズな診療を提供できますので、ご協力ください)。
2. 身体診察
大きな病気が隠れている可能性がないか、丁寧に診察を行います。
3. 検査
各症状から疑われる起立性調節障害以外の病気をスクリーニングするための検査を行います。血液検査や心電図検査、超音波検査などがこれに該当します。場合によっては、外部機関の画像センターでCTやMRI検査を勧めさせていただくこともあります。「新起立試験」や「ヘッドアップティルト試験」は当院では行なっておりません。場合によっては、これらの検査を行なっている医療機関をご紹介させていただくこともあります。
4. 治療のご案内
起立性調節障害が疑われた場合、症状を改善させるためにどういったことができるか、それぞれの患者様にあった対策法を医師から提案致します。その上で、それぞれの症状にあったお薬や漢方薬などを処方することがあります。症状がなかなか改善しないケースもよくあるので、しっかり良くなるまで定期的に通院していただくことをお勧めします。