「うっ血（うっけつ）」というのはあまりなじみのない言葉かもしれません。うっ血は、血液のめぐりが滞っている状態のことで、心不全によってうっ血が生じ、さまざまな症状が出ている状態のことをうっ血性心不全といいます。少し動いただけで息切れがする、足がむくむ、体がだるい…。そんな症状がある場合、うっ血性心不全の可能性があります。初期には症状に気付きにくいため、気付いたときにはかなり進行している場合もあります。早期に適切な治療が受けられるよう、特徴や治療法について詳しく解説します。
うっ血性心不全ってどんな状態？
まず初めに、うっ血性心不全とはどのような状態なのかについて説明します。
心不全とは
心臓は全身に血液を送るポンプの役割を果たしています。心不全は、心臓の働きが弱まってポンプの役割を十分果たせなくなった状態のことをいいます。
うっ血とは
「うっ血」は血液の流れが悪くなり、滞ってしまう状態のことをいいます。血液の渋滞ともいえるような状態です。心不全が進むと体中のいたるところでうっ血が起こります。
うっ血性心不全とは
何らかの原因により心臓から血液を送り出す力が弱まり、体の中のさまざまな場所でうっ血が起こった状態のことをうっ血性心不全といいます。
心臓の左側である左心系（さしんけい）の働きが弱まると、肺から戻った血液を全身に送り切ることができず、肺に血液がたまる「肺うっ血」の状態になります。心臓の右側である右心系（うしんけい）の働きが弱まると、肺へ血液を送り出せなくなるため、全身をめぐった血液が心臓へ戻れなくなり、全身にうっ血が生じます。
うっ血性心不全の原因
次のような、心臓に負担をかけるさまざまな病気が、うっ血性心不全の原因となります。
・心筋梗塞（しんきんこうそく）
・狭心症（きょうしんしょう）
・心臓弁膜症（しんぞうべんまくしょう）
・心筋症
・先天性心疾患
・不整脈
・高血圧
また、加齢によって心臓のポンプ機能が弱まり、うっ血性心不全を起こすこともあります。高齢の方は心不全を引き起こしやすいため、体調の変化に日頃から気を配ることが早期発見のためにも重要です。
うっ血性心不全の症状
うっ血性心不全になるとどのような症状が起こるのでしょうか。急性の場合と慢性の場合に分けて解説します。
急性の場合
急性心筋梗塞（きゅうせいしんきんこうそく）などが原因で一気に心不全が進んでうっ血状態となった場合、次のような症状が急激に出ます。
・激しい呼吸困難
・咳込み
・脈拍数の増加
慢性の場合
慢性のうっ血性心不全では、次のような症状が徐々に現れます。初期には自覚症状が出ない場合も多く、特に高齢の方では「年のせい」と放置してしまうこともあるため注意が必要です。
・息切れ
・むくみ
・体重増加
・横になると息苦しく、座っていた方が呼吸が楽になる起坐呼吸（きざこきゅう）
・体がだるい
・食欲不振
・咳が出る
うっ血性心不全の検査
うっ血性心不全の診断には次のような検査を行います。
・血液検査
・心エコー検査
・胸部レントゲン検査
・心電図
原因を詳しく調べるためには、心臓カテーテル検査が必要になることもあります。
うっ血性心不全の重症度分類
うっ血性心不全は重症度によって4つの段階に分かれます。
Ⅰ度‥心臓の病気はあるが、通常の身体活動では疲労、動悸（どうき）、息切れ、胸の痛みなどの症状は起こらない。
Ⅱ度‥通常の身体活動で症状が出る。安静にしていれば症状は無い。
Ⅲ度‥通常以下の身体活動で症状が出る。安静にしていれば症状は無い。
Ⅳ度‥安静にしていても、どんな状態でも症状が出る。
うっ血性心不全の治療
うっ血性心不全と診断された場合、どのような治療を行うのか、日常生活の中で注意が必要な点は何かについて解説します。
原因となっている病気の治療
うっ血性心不全の症状改善のためには薬による治療や食事療法などが行われますが、心不全の原因となっている心臓の病気がある場合には、その治療を並行して行います。例えば、心筋梗塞に対する心臓カテーテル治療などです。
薬による治療
うっ血によるむくみなどの症状を取るために、利尿薬が使われます。また、心臓への負担を減らすため、β遮断薬（ベータしゃだんやく）や血圧を下げる薬が使われることもあります。
食事療法
塩分を摂りすぎると体の中に水分をためこみやすくなり、うっ血の状態が悪化します。塩分は1日6グラム以下に抑えるようにします。重症度によっては水分の制限も必要になる場合があります。
普段の生活で注意すること
心不全の悪化を防いだり、早期に発見したりするために、日常生活の中では次のようなことに注意しましょう。
・禁煙をする
・体重が急に増えていないか日頃からチェックする
・重症度に応じ、無理のない範囲で適度に体を動かす
・肥満のある方は減量を行う
少しでも気になる症状が現れた場合は、すぐに主治医へ相談することが大切です。
クリニックプラスでのうっ血性心不全の診療の流れ
①血圧や脈拍、血中酸素飽和度の測定
受付を済ませた方は看護師が声をかけますので、血圧や脈拍、血中酸素飽和度を測定させていただきます。
②問診
症状についてお話をききます。初診の方は基礎疾患の有無や嗜好品の有無、家族歴についても聴取します。事前LINE問診であらかじめお答えいただくと、診察がスムーズに行われます。
③身体診察
聴診器を用い、心臓の音や呼吸音に異常がないかを確認します。その他、足に浮腫みがでていないかなど、医師が丁寧に診察を行います。
④検査
必要に応じて採血検査や心電図検査、心臓超音波検査（心エコー検査）などを行います。心エコー検査は心不全を診断するにあたってとても重要な検査です。心エコー検査にかかる時間は5分程度で、心不全の状態をその場で評価し、結果をお伝えすることができます。
⑤薬の処方及び生活指導
外来診療で治療が可能と判断した場合、心不全の治療薬を用いて、治療を行っていきます。また、心不全の管理をする上で、塩分制限や水分制限が非常に重要です。日々の塩分・水分摂取量のコントロールや体重測定などの指導を行っていきます。
⑥専門病院への紹介
酸素の投与が必要な方や、点滴での治療が必要な方は、専門的な入院加療がうけられる、大学病院や総合病院へ紹介します。クリニックプラスは多くの大学病院や総合病院と連携をとっておりますので、速やかに紹介することが可能です。
うっ血性心不全は早期治療介入が重要な病気です。クリニックプラスでは循環器内科専門医による診療を、スピーディに受けることができます。クリニックプラスでは、事前LINE問診や、事前クレカ決済システムなど、テクノロジーを活用することで待ち時間を少しでも短くする取り組みを行っています。また、平日は夜の8時まで、さらには土日祝日も毎日営業することで、通院しやすい体制を整えています。息切れや浮腫みでお悩みの方はぜひ一度相談に来てください。
