腎血管性高血圧(じんけっかんせいこうけつあつ)は、腎臓関連の病気などが原因で高血圧となる、二次性高血圧症の代表的な病気です。二次性高血圧症では原因となっている病気を治せば、血圧も正常になります。ここでは腎血管性高血圧が起こる理由や診断と症状、主な治療方法について解説します。
腎血管性高血圧の基本知識
初めに腎血管性高血圧がどのような病気なのか、簡単に解説します。
腎血管性高血圧は、加齢に伴う動脈効果などが原因となり血圧上昇が誘発される二次性高血圧症の代表的な例です。
一般的には腎動脈が狭くなり、レニンという血圧を調整する物質が放出されることで高血圧となります。レニンは血流を維持するためのホルモンで、腎臓の働きを守る役割を果たしますが、同時に血圧も上昇させてしまいます。
全国に約4,300万人と推定される高血圧患者全体のうち、約1%が腎血管性高血圧です。
腎血管性高血圧の原因は?
腎血管性高血圧の原因について、さらに詳しく見ていきましょう。
中・高年齢者では動脈硬化によるものが多い
腎血管性高血圧は、約80%の症例では動脈硬化と大きな関連性があり、約20%は線維筋性異形成(せんいきんせいいけいせい)によるものとされます。
特に50歳以上の男性では、動脈硬化が多く見られます。
線維筋性異形成は、動脈の壁が異常に厚くなる病気です。動脈硬化との関連性はありませんが、血管の狭窄(血管が狭まっている状態)や閉塞の原因となります。
若い世代での腎血管性高血圧の原因
若年の女性では線維筋性異形成から、腎血管性高血圧となる例が見られます。先にもあったように、線維筋性異形成は動脈の狭窄を起こし、若年性高血圧の一因となる病気です。
線維筋性異形成は40~60歳の女性に発生することが多い原因不明の疾患で、遺伝・喫煙などとの関連性が疑われています。
大動脈炎症候群(だいどうみゃくえんしょうこうぐん)は、身体のいたるところで大動脈に炎症が起こる状態です。原因は不明ですが、主に若い女性に多く見られます。大動脈炎症候群が腎臓の動脈で起こると、腎血管性高血圧症をひき起こします。
またこれ以外にも長期に腎臓の昇圧因子であるレニンを抑える薬を服用している場合に、腎動脈の狭窄が進み、高血圧となるケースもあります。
腎血管性高血圧の症状と診断
腎血管性高血圧である場合には、どのような症状が起きるのでしょうか。診断の手がかりとなる症状について解説します。
腎血管性高血圧が発生している時の症状は?
腎血管性高血圧では一般的な高血圧と同様、患者本人には目立った自覚症状が出ない場合が多く見られます。
特に動脈硬化による腎血管性高血圧では、自分でも気づかないうちに全身の動脈硬化が進行している可能性があります。
腎血管性高血圧の診断
無自覚であることが多い腎血管性高血圧ですが、診断の手がかりとなる症状があります。
若い女性の高血圧症や中高年者の急激な血圧上昇、血圧のコントロールがうまくいかないといった状態のときには、腎血管性高血圧が疑われます。
また腹部に聴診器を当てたときに血管雑音が聞こえる場合や、血液中のカリウムが低い場合、腎臓の大きさに左右差がある場合なども、腎血管性高血圧が疑われます。
腎血管性高血圧を疑った場合には、MRアンギオグラフィで腎動脈の狭窄の有無を評価したり、腎動脈の血流を測定するドップラーエコー検査を行って診断を行います。
腎血管性高血圧の治療方法
検査により、腎血管性高血圧であることが明らかになった場合の治療方法を紹介します。
状態によって薬物やカテーテル治療などがある
患者それぞれの状態に従って、薬物療法による治療やカテーテル治療が行われます。
軽症の場合には、降圧薬の内服で治療を行う事が多いです。具体的には、レニンを抑える薬の服用によって血圧を低下させます。
服薬しても血圧が下がらない場合や腎動脈狭窄が高度な場合、左右両方の腎動脈が狭くなっている場合などには、カテーテル治療を行います。狭窄している部位にバルーンで広げたり、ステントと呼ばれる金属のメッシュ状の筒をいれて血管の内側から狭窄部位を拡張することで、血流を回復させ、血圧を正常に戻すことができます。
クリニックプラスでの腎血管性高血圧の診療の流れ
腎血管性高血圧で受診された方の、クリニックプラスでの診療の流れを説明します。
①血圧の測定
受付を済ませた方は看護師が声をかけますので、血圧を測定していただきます。
②問診
病院や健康診断で測った血圧は、家庭での血圧より高めに出ることが多いです。ご自宅で血圧を普段測っていない方は、まず血圧計をご購入いただき、毎日の自宅での血圧を測定し、記録してもらうことから始めます。ご自宅で血圧を記録している方は、普段どのくらいの血圧で推移しているか、教えてもらいます。血圧手帳や、記録に使用しているアプリなどをご提示いただけるとスムーズに診療が行われます。
③身体診察
腹部に聴診器をあて、血管雑音が聞こえたりしないか、医師が丁寧に診察を行います。
④検査
30歳以下の比較的若年の方や、薬による血圧の反応が乏しい場合、異常に血圧が高い場合などは、腎血管性高血圧を含む二次性高血圧の関与を考え、血液検査を行います。血液検査の結果、腎血管性高血圧が疑われた場合、さらに確定診断を得るためにMRIやCTなどの検査を行う場合もあります。
⑤生活指導および処方
動脈硬化による腎血管性高血圧の場合、生活指導と投薬加療を行っていきます。普段とっている食事や運動、嗜好品などを聴取し、改善できる部分に関して指導を行なっていきます。また、血圧の推移をみながら、血圧の薬を調整していきますので、飲み忘れがない様にご注意ください。
⑥専門病院への紹介
カテーテル治療など専門的な治療が必要になる可能性があると判断した時点で、大学病院や総合病院へ紹介します。クリニックプラスは多くの大学病院や総合病院と連携をとっておりますので、速やかに紹介することが可能です。
腎血管性高血圧の治療は日々の生活習慣の改善と、薬の内服、そして何より定期的にクリニックに通院することが何より重要です。クリニックプラスでは事前LINE問診や、事前クレカ決済システムなど、テクノロジーを活用することで待ち時間を少しでも短くする取り組みを行っています。また、平日は夜の8時まで、さらには土日祝日も毎日営業することで、通院しやすい体制を整えています。高血圧は自覚症状があまり出ないため、なかなか病気という認識を持ちにくいかもしれませんが、重篤な疾患の引き金になり得ます。健康診断などで血圧が高いといわれた方はぜひ一度相談に来てください。