首が腫れて痛い、胸がドキドキする、疲れやすい…。そのような症状は、亜急性甲状腺炎(あきゅうせいこうじょうせんえん)によるものかもしれません。亜急性甲状腺炎は、のどのあたりにある甲状腺に炎症が起こることでさまざまな症状が出る病気ですが、風邪や中耳炎などの他の病気と間違われることも少なくありません。症状が続くとつらく、体に負担がかかってしまいます。早期に適切な治療ができるよう、亜急性甲状腺炎の特徴について詳しく解説します。
亜急性甲状腺炎とは?
まず初めに、亜急性甲状腺炎の特徴や原因について解説します。
亜急性甲状腺炎ってどんな病気?
甲状腺とは、のどぼとけの下にある蝶(ちょう)の形をした臓器です。甲状腺では甲状腺ホルモンが作られ、心拍の速さや体温など体の代謝を調節しています。亜急性甲状腺炎は、甲状腺に炎症が起き、甲状腺の組織が壊れてしまう病気です。甲状腺の組織が壊れると、中にあった甲状腺ホルモンが血液の中に流れ出てきてしまい、血液中の甲状腺ホルモンの量が多くなり、甲状腺中毒症(こうじょうせんちゅうどくしょう)と呼ばれる症状が起こります。
亜急性というのは、急性よりは症状が長く続くものの、慢性的にずっと続くわけではありません。数か月ほど時間はかかりますが、ほとんどの場合、症状は自然におさまります。
亜急性甲状腺炎の原因は?
亜急性甲状腺炎の原因はまだはっきりとは分かっていません。風邪を引いた後などに発症することが多いため、ウイルスが原因で起こるのではないかといわれています。
亜急性甲状腺炎の症状
亜急性甲状腺炎の症状には、甲状腺の炎症が原因で起こるものと、血液中の甲状腺ホルモンの増加が原因で起こるものとがあります。ここではそれぞれの症状について解説します。
甲状腺の炎症が原因で起こる症状
甲状腺の炎症が原因で起こる症状には次のようなものがあります。
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首の腫れと痛み
甲状腺がある首の前の方が硬く腫れ、痛みを伴います。腫れや痛みは、時間とともに左右に移動するのが特徴で、しばらくすると1か所に落ち着くこともあります。痛みはあごの下やのど、耳のあたりに感じることもあるため、風邪や歯痛、中耳炎などと間違われやすく注意が必要です。 -
発熱
熱の高さは微熱だったり高熱だったりさまざまです。また、熱が出ない場合もあります。
甲状腺ホルモンが原因で起こる症状
血液中の甲状腺ホルモンの量が増える甲状腺中毒症により、次のような症状が出ます。
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疲労感
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動悸(胸のドキドキ)
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汗が多く出る
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体がほてる
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体重が減る
亜急性甲状腺炎の検査
亜急性甲状腺炎の検査には次のようなものがあります。
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血液検査
血液中の甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの値を調べます。また、炎症が起きると数値が上がるCRPの値も見ます。 -
甲状腺エコー
甲状腺の腫れの有無や程度を確認します。
亜急性甲状腺炎は、これらの検査の結果と症状から診断します。
亜急性甲状腺炎の治療
亜急性甲状腺炎と診断された場合、どのような治療を行うのでしょうか。ここでは治療法や治療中の注意点について解説します。
どんな治療をするの?
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炎症症状に対する治療
首の腫れや痛み、発熱のような炎症症状に対しては、ロキソニンに代表される非ステロイド性抗炎症薬やステロイドを使って治療します。ステロイドを使うと1~2日で症状が改善します。 -
甲状腺中毒症に対する治療
頻脈や動悸など、甲状腺ホルモンによる症状が強く出ている場合には、β遮断薬(ベータしゃだんやく)という薬を使って症状を抑えることもあります。
治療中の注意点は?
治療中は運動を避け、できるだけ安静に過ごすようにしましょう。ステロイドは急に飲むのをやめてしまうと症状がぶり返してしまうことがありますので、少しずつ飲む量を減らしていく必要があります。症状が改善したからといって自己判断でやめてしまわずに、必ず医師の服薬指導のもと、量を調整していくようにしましょう。
亜急性甲状腺炎の経過
ほとんどの場合、甲状腺の炎症は数か月以内におさまり、血液中の甲状腺ホルモンの量も正常に戻ります。血液中の甲状腺ホルモンは、正常化する前に一時的に少なくなります。まれではありますが、この甲状腺ホルモンが少なくなった状態が続き、甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)となってしまう場合があります。そのようなケースでは甲状腺ホルモンを補充する治療が必要となります。
亜急性甲状腺炎と疑われた方のクリニックプラスでの診療の流れ
①問診
まずいつからどの様な症状がでているかなど、診断・治療に必要な情報を集めるために、医師がいくつか質問します。(LINEの事前問診にお答えいただきますと、よりスムーズな診療を提供できますので、ご協力ください。)
②身体診察
甲状腺の触診の他、胸の聴診など、異常がないか全身を丁寧に診察します。
③検査
医師が必要と判断した場合には、検査を行うこともあります。クリニックプラスで行える検査は以下になります。
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血液検査 →甲状腺ホルモンや炎症反応の値をチェックします。
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心電図検査 →甲状腺ホルモンの異常により、不整脈がおきていないかを判断します。
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超音波検査※ →甲状腺の形態に異常がないかをみます。
※検査できる院とできない院があります。また、検査対応可の院でも、対応できる日が異なりますので、検査をご希望の方は、事前に各院にお問い合わせください。
④処方あるいは専門医療機関へ紹介
亜急性甲状腺炎と診断された場合、飲み薬の治療を行います。ただし、重症の場合や、クリニックプラスの検査では十分に判断がつかない様な場合には、専門の医療機関にご紹介させていただくこともあります。クリニックプラスは多くの大学病院や総合病院と連携をとっておりますので、速やかに紹介することが可能です。
亜急性甲状腺炎は早期診断・早期加療が大切です。クリニックプラスでは平日は夜の8時まで、さらには土日祝日も毎日営業しています。亜急性甲状腺炎を疑うような症状がありましたら、まずはお気軽に御相談にいらしてください。